北朝鮮のミサイル発射は、アメリカのアジア防衛網構築の弾みに
金正恩の放った矢はアジアの軍事バランスにきしみを生み出した
2月8日、北朝鮮が7日事実上の長距離弾道ミサイル打ち上げを強行したことで、米国のアジアでのミサイル防衛構築が加速する可能性があることが米政府高官などの話で分かった。写真は米国防省ミサイル防衛局提供(2016年 ロイター)
北朝鮮が7日、事実上の長距離弾道ミサイル打ち上げを強行したことをきっかけに、米国のアジアでのミサイル防衛構築が加速する可能性があることが、米政府高官やミサイル防衛専門家の話で分かった。米軍のアジアプレゼンスが拡大すれば中国との関係が一段と緊迫化しかねない。
先月の核実験に続いてのミサイル発射を受けて、米政府は同盟国の日本と韓国に対して、両国防衛へのコミットメントをあらためて確認。
北朝鮮のミサイル発射から数時間後、米韓は共同声明を発表し、最新鋭の地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の朝鮮半島への配備問題について、公式協議を開始する、と発表した。
韓国はこれまで、最大の貿易相手国である中国を怒らせることを懸念、THAAD配備の可能性を公式に議論することは差し控えていた。
米韓共同声明を受けて、南シナ海での人工島造営をめぐって米国との関係がぎくしゃくしている中国は、さっそく「深刻な懸念の意」を表明。THAADのレーダーが自国領内に及ぶ可能性があることに、警戒感を露わにした。中国外務省の華春瑩報道官は「安全保障を追求する場合には、他国の安全保障上の利益を損なうべきではない」と述べた。
THAAD配備に追い風
ある米政府高官は、北朝鮮のミサイル打ち上げを受けて危機感が高まった結果、これまでTHAADに慎重だった韓国政府の一部勢力も折れる可能性があり、韓国にとって大きな転機となるとの見方を示した。
日本では、菅義偉官房長官が8日、記者団に対して、THAADの配備に関する具体的な計画はないと述べた。ただ、新たな軍備の導入は日本の能力増強につながると防衛省は認識している、とも付け加えた。