災害が起きても「1日で対応」...パナソニックが実現したサプライチェーンのレジリエンス強化
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<自然災害が拡大するなか、ますます重要度が増すレジリエンス(回復力)の強化。大手電材メーカーのパナソニックは、先進的なSCM(サプライチェーン・マネジメント)導入で災害・有事への対応を進化させている>
世界を変えるには、ニュースになるような大規模なプロジェクトや商品だけでは不十分。日本企業のたとえ小さなSDGsであっても、それが広く伝われば、共感を生み、新たなアイデアにつながり、社会課題の解決に近づいていく──。この考えに基づいてニューズウィーク日本版は昨年に「SDGsアワード」を立ち上げ、今年で2年目を迎えました。その一環として、日本企業によるSDGsの取り組みを積極的に情報発信していきます。
火災で一部製品の供給が1年半止まった痛い経験
SDGsの目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」には、持続可能で災害に強いインフラを構築することも含まれる。気候変動の影響で実際に自然災害の頻度や規模が拡大しており、昨今、インフラの「レジリエンス(回復力)」強化は重要度が増している。
製造業のサプライチェーンも、そうしたインフラと同等に考えてよいだろう。
サプライチェーン上のリスク管理は、なにもその1社だけが抱える課題ではない。コロナ禍で物流が遮断され、世界経済に打撃が加えられたことからも明らかなように、サプライチェーンが寸断され、経済が止まれば、人々の生活に大きな影響が及ぶ。
そのため有事においても安定的な供給を実現すべく、昨今、SCM(サプライチェーン・マネジメント)の導入が各社で進んでいる。
電気配線やコンセント、照明のスイッチといった電気設備資材から、照明器具、純水素型燃料電池まで幅広い商材を扱うパナソニック エレクトリックワーク社(以下、パナソニックEW社)は、まさにその「サプライチェーン寸断」を経験した。
電材事業で国内最大手、世界シェア2位の企業だが、2020年に国内大手サプライヤーの火災により、約1年半にわたり一部製品の供給がストップしてしまった。
以来、同社はリスク管理体制を見直し、2023年4月には「ES-Resi.(ESレジ)」を導入。従来は災害発生などの情報をバケツリレーのように拠点間で伝達していたが、それを一元化させるSCMのシステムだ。
全社での情報共有、サプライチェーン上のアクシデントで影響を受ける部品の早期掌握、そして代替品の事前登録による対応アクションの早期化が、これで可能になった。
「BCM(事業継続計画)状況の把握を、平均10日から3日にまで短縮することができました」と、同社サプライチェーン統括センターの森下賢治所長は言う。