パレスチナ人の一斉蜂起「インティファーダ」は防げるか
それでもデモはきっとまた起きると、デモに加わった建設請負業者のハレド・ザワフレは言う。PLO(パレスチナ解放機構)傘下の左派組織・パレスチナ解放民主戦線の活動家でもあるザワフレに言わせれば、アッバスは「インティファーダの敵」だ。12月30日にも別のPLO傘下組織の活動家らの呼び掛けで数百人がベイトエルに向かってデモ行進を試みた。参加者にはPLO主流派でアッバスが率いるファタハ支持者もいた。暴力沙汰にはならなかったものの、デモ隊はやはりパレスチナの治安部隊に追い返された。
こうした介入が続けばアッバスの支持率低下は加速しそうだ。12月の支持率は35%と、半年前の44%から急落した。同月のPSRの調査でも、パレスチナ人の3人中2人がアッバスは退陣すべきだと考えている。議長としての正統性の問題もある。アッバスが議長に選出されたのは05年1月で任期は09年に切れている。しかしパレスチナはファタハが実効支配する西岸とイスラム過激派組織ハマスが実効支配するガザ地区とに分裂したままで、選挙の見通しは立っていない。
前任者のヤセル・アラファトは歴戦の勇者でけんかっ早いところがあったが、アッバスはどことなく学者風で感情を表に出さない印象だ。社会不安について公の場では短い発言しかせず、自治政府の長というより政治コメンテーターのようだと、パレスチナの政治評論家ハニ・マスリは言う。
アッバスは新たな蜂起は望んでいないと、ニムル・ハマド自治政府議長補佐官は主張する。「インティファーダはパレスチナ人の利益にならず、いかなる和解にもつながらない。われわれは交渉による紛争解決を望んでいる」
「弱腰」批判に反論も
最近はファタハ内部からも、イスラエルとの対決姿勢を強めるべきだという突き上げがある。
アッバスはイスラエル軍との治安協力を停止するという昨年のPLO中央評議会の決議を守るべきだと、ファタハのナイム・ムラルは言う。西岸のユダヤ人入植地で製造・栽培されたものだけでなく、すべてのイスラエル製品に対する不買運動を承認し、イスラエルの指導者たちを戦犯として国際刑事裁判所で裁くよう強く要求すべきでもある、とムラルは主張する。「ファタハの政治的立場は蜂起の動きと一致させるべきだ」
マスリも同じ意見だ。「アッバスは発言も行動も指導力を発揮することもしない。枝葉末節の問題にあくせくしている」。マスリによれば、「指導部は袋小路に迷い込んでいる。何をすべきか途方に暮れている。住民に進むべき道を示せるような有効な計画を打ち出せていない。住民は各自の判断で行動するしかない」