保守化する「反北朝鮮」世代
これを受け、当時の李明博(イ・ミョンバク)大統領は対抗措置を決断。5月24日に行った国民向け談話で、北朝鮮における共同事業「開城工業団地」を除き、南北の交易を中断する「5・24措置」に乗り出した。
北朝鮮は「敵」で「他人」
緊張に拍車を掛けたのが、同年11月に発生した延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件だ。黄海上の軍事境界線、北方限界線(NLL)近くに位置する韓国領の同島に、朝鮮人民軍が砲弾を発射。民間人2人と韓国軍兵士2人が死亡した。
北朝鮮側の動機には各種の説があるが、事件の数カ月前に実施された米韓合同軍事演習への反発が要因だった可能性がある。天安沈没事件によって閉じられた南北間のドアは、延坪島砲撃事件の後、鍵まで掛けられた状態になってしまった。
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それから5年以上が過ぎた今も、南北関係にほとんど変化はない。そうした現状は、韓国の世論に反映されている。
高麗大学の李信和(イ・シナ)教授は11年、世論調査に基づく研究書の中で、韓国人の対北朝鮮観が悪化していることを示した。
李は、05年と10年に行われた世論調査を比較。10年の調査では、北朝鮮は「仲間」「同胞」「隣人」「他人」「敵」のどれだと思うか、選択肢のうち2つを選ぶ設問で、「敵」または「他人」と回答した人の割合がどちらも31.9%に達した。05年の調査と比べて、それぞれ16.6ポイントと13.5ポイント上昇している。
全体で見れば「仲間」(33.6%)、「隣人」(35.4%)、「同胞」(45.5%)を選択した人のほうが多かった。しかしその割合はそれぞれ、05年当時より11.9ポイント、13.3ポイント、6.6ポイント低下している。
より最近の世論調査からは、悪化傾向が一過性のものではないことが分かる。昨年1月にアサン政策研究院(ソウル)が発表した報告書によれば、「若者の北朝鮮離れ」は10~14年に行われた「世論調査で繰り返し見られる傾向のうち、おそらく最も重要なもの」だ。
注目すべきことに、報告書は若年層を安全保障(つまり北朝鮮問題)において「保守派」と位置付け、彼らの「北朝鮮に対する姿勢は30~40代よりはるかに保守的だ」と指摘する。
南北統一に背を向けて
安全保障分野に限れば、韓国の若者は、最も保守的な世代である60代以上の高齢層と同じ考えを持つ。この2つの世代は外交問題、とりわけ北朝鮮問題に関して現実政治を重視する点で一致している。