保守化する「反北朝鮮」世代
とはいえ、態度は同じでもその理由は異なる。南北分断や朝鮮戦争の経験者を含む高齢層は、政治的に不安定な状況の下で徹底した反共教育を受けた。一方、若い世代は比較的リベラルで多元主義的な環境の中、物質的に豊かで政治的にも安定した社会で成長してきた。
さらに20代の若者は、韓国の経済力や国際的影響力が高まった時代に政治意識に目覚めている。つまり彼らにとって意味を持つのは「韓国人」であること。こうしたアイデンティティー意識は過去になかったものだ。
実際、若年層は「南北統一で一国としての朝鮮を成立させる」という理念にほとんど共感を持っていない。彼らが抱くのは、韓国という国家を対象とする新手のナショナリズムだ。そうした新たな考え方が、北朝鮮への態度も変えた。
ソウル大学の金(キム)ソクホ教授(社会学)は昨年8月、韓国の若者についてメディアにこう語った。「10代、あるいは20歳前後で経験した天安沈没事件や延坪島砲撃事件が、彼らの保守的でナショナリスト的な考えを形成している可能性がある」
確かに彼らの態度は保守的だが、これまでの世代よりナショナリスト的とは言えない。若者たちのナショナリズムは、従来と形が違うだけだ。その違いは「朝鮮民族」ではなく「韓国」に帰属意識を持つ点にある。
韓国の若者は北朝鮮の「水爆実験」に、大きな衝撃を受けなかったかもしれない。だがその曖昧な態度に目をくらまされて、全体像を見失ってはならない。すなわち、韓国では既に根本的変化が起きているという事実を。
多くの若者はもはや北朝鮮に愛想を尽かしている。南北統一を支持する世代が先細りする今、北朝鮮は単なる「他国」。その他国が武力挑発に及んだら、反感が高まるのは当然のことだ。
From thediplomat.com
[2016年2月 2日号掲載]