宇宙での「中国外し」は限界
どうして、アメリカは中国との宇宙協力を避けるのか。米海軍大学校のジョアン・ジョンソンフリース教授(国家安全保障問題)の言葉を借りれば、それは「政治的パフォーマンス」の産物なのかもしれない。
下院歳出委員会商業・司法・科学小委員会のフランク・ウルフ前委員長が11年のNASA歳出予算法案に、中国との協力を禁じる条項を盛り込んだのは、中国の人権問題が理由だった。ウルフは、中国をナチスになぞらえたこともある対中強硬派だ。この条項により、中国人の科学者は国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗できない。
ウルフは昨年引退したが、後任のジョン・カルバートソン小委員長も、「赤い中国をわが国の宇宙開発プログラムから排除」し続ける意向を示している。もっとも、これにより人権問題に関する中国の姿勢が変わることはないだろう。アメリカ以外の国が同調していないからだ。
アメリカの一部の情報機関当局者の間には、技術交流を行うと中国に軍事利用されるのではないかという懸念もある。根拠のない懸念ではない。中国は07年1月、自国の気象衛星を標的に用いて衛星破壊実験を成功させている。
当時の劉建超(リウ・チエンチャオ)中国外務省報道局長は、「脅威を感じる必要はない」「宇宙空間で軍拡競争をするつもりはない」と述べていた。しかし、米中経済安全保障調査委員会(米議会の諮問機関)が最近発表した報告書によれば、中国は衛星破壊ミサイルを含む「広範かつ強力な」宇宙兵器の開発を進めているという。
意図がどうあれ、中国の宇宙開発は大半の国を圧倒している。清華大学(北京)の宝音賀西(パオイン・ホーシー)教授(宇宙工学)に言わせれば、この見方は過大評価だ。「中国は途上国だ。産業と技術の基盤はまだとても弱い。宇宙開発でアメリカを追い抜くのは、何百年も先だろう。そもそも、そんな日が来るのかも定かでない」
それでも、宇宙開発を力強く前進させている中国を含めた国際協力体制を構築することには大きな利点がある。それは資源を節約できることだ。「共通の目的は、宇宙を理解すること。共通の敵は、複雑性とコスト」と、ISSの船長を務めたカナダの元宇宙飛行士クリス・ハドフィールドは述べている。国際協力を行えば、貴重な時間と予算を節約できる。
アメリカと中国が宇宙空間で「共通の敵」と戦うために手を結ぶ日は、訪れるのだろうか。
From GlobalPost.com特約
[2015年12月 8日号掲載]