最新記事

犯罪

各国政府が抗議する中国当局の「キツネ狩り作戦」に変化の兆し

習国家主席の欧米訪問を機に、海外逃亡した中国汚職官僚の身柄引き渡しが実現か

2015年11月12日(木)15時41分

11月10日、中国の汚職対策当局のトップによれば、中国は、国内で汚職を告発されて国外に逃亡している者をグローバル規模で追跡する作戦を変更したという。写真は北京の天安門広場。9月撮影(2015年 ロイター/Jason Lee)

 中国の汚職対策当局のトップによれば、中国は、国内で汚職を告発されて国外に逃亡している者をグローバル規模で追跡する作戦を変更したという。

 捜査官を海外に派遣して容疑者を追跡する中国政府の手法に対して、各国から抗議の声があがっているためだ。

 海外に逃亡した中国の汚職容疑者の送還作戦を担当する劉建超氏は9日、ロイターとのインタビューに応じ、中国政府は諸外国の政府との協力を強化しており、今後は相手国による承認がない限り、帰国するよう容疑者を説得するための当局者派遣を慎むと述べた。

 中国は、「キツネ狩り作戦」と呼ばれる汚職対策キャンペーンのもとで今年600人以上の汚職官僚を海外で追跡し、国内に連れ戻している。劉氏が「大変な任務」と称する、根深い汚職に対する広範な摘発作戦の一環である。

 国際刑事警察機構(インターポール)中国国家センター局が4月に発行したレッドノーティス(国際的な逮捕令状に最も近い文書)に記載された上位100人の容疑者のうち、17人が本国送還されたという。

 法執行面での協力体制を改善するためイギリスを訪れた劉氏は、「さまざまなレベルの中国当局としては、訪問先の国に対して害を及ぼす意図は実際にはなかったものの、苦情を受けたことで、任務の進め方に改善の余地があることを認識した」とロイターに語った。

 「そこで今、関係各国の当局と協議し、支援と理解を求めるとともに、相手国の法的手続、ルールを遵守することをはっきりと告げているところだ」と同氏は言う。経済犯罪で逃亡した容疑者を本国送還するなかで中国政府が受けた抗議を率直に認めるのは異例のことだ。

 

「手ごわい」任務

 北京駐在の西側各国の外交官は、中国が海外に捜査官を派遣して帰国するよう容疑者を説得していることに各国政府は激怒しており、中国が各国の協力を望むのであれば、公明正大に法的手続と現地の裁判所を活用しなければならない、と話している。

 なかでも米国は、中国の捜査官が米国内で逃亡者に対して帰国するよう圧力をかけていると主張し、中国に警告を送っている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

全米鉄鋼労組会長、日鉄・USスチール提起訴訟の棄却

ビジネス

カナダ企業団体・労組幹部が経済活性化で7日に会合、

ビジネス

英アーム、通期見通しを下方修正 株価下落

ワールド

仏下院でバイル首相の内閣不信任案否決、予算成立に道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:中国経済ピークアウト
特集:中国経済ピークアウト
2025年2月11日号(2/ 4発売)

AIやEVは輝き、バブル崩壊と需要減が影を落とす。中国「14億経済」の現在地と未来図を読む

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 2
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギー不足を補う「ある食品」で賢い選択を
  • 3
    教職不人気で加速する「教員の学力低下」の深刻度
  • 4
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    マイクロプラスチックが「脳の血流」を長期間にわた…
  • 7
    「僕は飛行機を遅らせた...」離陸直前に翼の部品が外…
  • 8
    【USAID】トランプ=マスクが援助を凍結した国々のリ…
  • 9
    AIやEVが輝く一方で、バブルや不況の影が広がる.....…
  • 10
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」を予防するだけじゃない!?「リンゴ酢」のすごい健康効果
  • 4
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 5
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 6
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 7
    「体が1日中だるい...」原因は食事にあり? エネルギ…
  • 8
    「靴下を履いて寝る」が実は正しい? 健康で快適な睡…
  • 9
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 10
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中