各国政府が抗議する中国当局の「キツネ狩り作戦」に変化の兆し
西側諸国は、中国との身柄引渡協定の締結に二の足を踏んでいる。その原因の一端は、中国の司法制度に対する懸念である。人権団体によれば、中国当局は拷問を行っており、汚職事件では死刑が行われることも珍しくないという。
2012年末に中国共産党のトップに就任して以来、習近平国家主席は汚職の取締りを推進してきた。それ以来、数十人の高級官僚が調査の対象となり、あるいは投獄されている。
中国政府は、汚職の容疑者を中国に連れ戻す作戦の進捗について定期的に最新情報を提供しており、ときには数十人の官僚がまとめて送還されたとの発表もある。
だが、汚職が疑われる官僚をその資産とともに中国が海外から連れ戻すことは困難で、汚職との戦いは難航している。
国家腐敗予防局の副局長を務める劉氏は「依然として、手ごわい任務だ」と話す。劉氏は党の中央規律検査委員会内の国際協力部トップでもある。
いまだ海外に留まっている対象リストのなかに楊秀珠容疑者がいる。中国東部の浙江省で建設局副局長を務めた楊容疑者は汚職の告発を受けており、米国の入国管理当局に身柄を保護されているが、亡命を申請している。
同容疑者の弟である地方官僚の楊進軍は9月に中国に送還された。これは中国が米国から容疑者を取り返すことに成功した最初の例である。
円滑な協力
劉氏は、習国家主席の公式訪問を受けたイギリス政府が、中国とのあいだで身柄引渡協定を締結することを期待しているという。「法執行に関してさらに円滑に協力していくことは、中国、イギリス双方にとって本当に利益になる」と同氏は語る。
劉氏はさらにインターポールのレッドノーティスで指定されたうち3人がイギリスに滞在しているという。うち1人に対しては帰国するよう説得が行われている。合計何人の官僚が国外で追跡されているのか、またこれまでに回収された資産の額については、明らかにしなかった。
劉氏は、容疑者の追跡は政治的動機によるものではないかとの懸念を一蹴し、「汚職に手を染めた者はすべて我々の敵であり、最後の1人まで司法に引き渡し、彼らの犯罪について裁判にかける」と断言する。