南シナ海、米中心理戦を読み解く――焦っているのはどちらか?
もしアメリカの賛同がなかったとすれば、IMF関係者が、このような発言をすることは考えにくい。今月末に開催されるであろうIMFの理事会で、アメリカが拒否権を発動しないという「裏の事情」があってこそ、こういった発表になったと考えていいだろう。
事実、9月末の米中首脳会談後、ワシントンは「人民元がIMFの基準を満たせば、SDR入りを支持する」と言っている。
それを裏付けるように日本の麻生財務大臣は、10月2日の記者会見で、IMFの準備通貨に人民元を採用することに関して、「決して悪いこと ではない」と述べた。アメリカが賛同していなければ、日本がこのようなことを言うはずがない。
したがって、米中首脳会談のあと、オバマ大統領の堪忍袋が切れて、ついにラッセンを南シナ海に出動させたなどという見方は、当たっていないと考える。
ちなみに中国が日中韓首脳会談および日中会談に応じたのも、IMFにおける賛成の一票を「日本」からも欲しいからだ。
それでも「歴史問題」に関しては譲らない(これに関しては別途、書くこととする)。
2.アメリカ特殊部隊のシリア派兵
オバマ大統領は、「過激派組織IS掃討作戦の一環として、シリアへ最大50人の特殊部隊の派遣を承認した」と、アメリカ政府高官が10月30日に明らかにした。シリアへの米軍地上部隊の派遣は初めてのことだ。
中国ではこのニュースを大きく扱い、オバマ大統領の「失点の焦り」を詳細に分析している。中央テレビ局CCTVは「メディアの焦点」という番組で、以下のように報道した。
「オバマ大統領はシリアにおける軍事行動に関して、2年前から優柔不断な態度を取り続け、ロシアが出動する機会を与えてしまった。おまけにロシアはシリア政府の許可を得て出動しているが、アメリカはシリア政府の許可を得るどころか反政府側を応援している混乱を招いている。中東における主導権をロシアに奪われたオバマ大統領は強いプレッシャーを感じて、小規模ではあるが存在感を強めようと焦っている。今後は特殊部隊の人数を増やすとしており、シリアは米ロの代理戦争の修羅場となっていく」
おおむね、こういう内容だ。