ASEAN国防拡大会議、米中の思惑――国連海洋法条約に加盟していないアメリカの欠陥
もし本気で中国を制裁したいのなら、国連の場で戦えばいい。
国連には「国連海洋法会議」があり、また準拠する法律として、「国連海洋法条約」がある。そこには「人工島」に関しても明記してある。中国もこの条約に加盟しているので、平和裏にというか、「武力による威嚇」ではなく、「論理武装による討議」で多数決議決をして中国を屈服させればいいのである。特にオバマ大統領はノーベル平和賞を受賞しているのだから、「中国が国連海洋法に違反している」というのなら、なおさらのこと、そうすればいいのではないかと、誰しも思うだろう。
ではなぜ、アメリカは、そういう手段に出ないのか?
それは、何を隠そう、アメリカこそが、この国連海洋法条約に加盟していないからである!
なぜ加盟していないかというと(というよりも、なぜ最初は主導的立場にありながら脱退したかというと)、アメリカ企業にとって不利だからだ。海洋法を守ると、アメリカ企業による深海開発に不利だということから脱退し、今日に至っている。
そのアメリカが「国際法」をかざして武力的な威嚇をすること自体、本末転倒ではないだろうか?
日本政府は、「法の順守」と言いながら、法から逸脱して動いているアメリカに全面的に賛同している。
それに対して、中国は1996年に加盟している。日本も同年、批准した(加盟した)。
中国のしたたかな戦略
中国が、南シナ海における行動を合法的とする法的基盤となっているのは、4月21日付けのの本コラム「すべては92年の領海法が分かれ目――中国、南沙諸島で合法性主張」に書いたように中国の領海法だ。
この領海法は、日本が1895年に閣議決定して日本の領土であることが明確になっている尖閣諸島を中国名「釣魚島」として、中国の領土としてしまった。明らかなルール違反である。
日本は瞬時に国際司法裁判所に提訴しなければならなかったが、何もしなかったのは、何度も書いてきた通りだ。しかし、いま現在、手がないわけではない。日本も中国も国連海洋法条約を批准しているので(加盟しているので)、国連海洋法会議で、違法性や不適切性などに関して指摘し、是正を求めるという方法が、まだ残っている。
しかし、アメリカは海洋法に関しては、自らが加盟していていないために、国連で討議しようとはしない。