安倍首相中央アジア歴訪と中国の一帯一路
しかし、あの巨額の「ばらまきチャイナ・マネー」に対して、日本も「金」で、というのは控えた方がいい。
「大河の一滴」に相当する効果があるのなら、チャイナ・マネーの「大河」に「一滴」のジャパン・マネーを注ぐのも悪くなかろう。しかし現状では「金額」で勝負に出ても日本国民の利益につながるとは思いにくい。金で勝負するなら、中国はもっと巨額のものを注ぎ、中央アジア諸国は漁夫の利を狙うだろう。
そういうことではなく、遅すぎたとはいえ、技術提携とか安心といった、中央アジア諸国の心理を読むことが不可欠だ。
かつてはソ連に併合され、今は中国の属国になりそうなこれらの国々は、その意味での、ある種の「不安」も抱えており、新たな「光」を求めているはずである。
中央アジア5カ国は、旧ソ連という「共産主義政権」の下で苦しみ、そこから独立した国々である。
今はロシアとも、共産主義政権の中国とも仲良くやってはいるが、彼らのメンタルとして「共産主義」が好きだろうか?
そのことに注目するといい。
現に日本時間の25日、ウズベキスタンのカリモフ大統領は日本の関与を「最も透明で効率的な動きをしている」と高く評価している。
また多くの民族や宗教が入り混じっているため、安全保障を確保する目的で、前述したように中国と上海協力機構を構成している。中国にとってはウイグル人の反乱を抑えるためにも利用しているが、中央アジア諸国の多くは、乱れを生じさせないために、実はかなり大統領権限が強い共和制を布いている。
以上の要素を複合的に考慮し、これからは首脳同士の接触を緊密にして、「金」ではなく、日本の最先端技術とさまざまな「安心」における協力を進めていくといいのではないだろうか。
[執筆者]
遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など著書多数
※当記事はYahoo!ニュース個人からの転載です。