安倍首相中央アジア歴訪と中国の一帯一路
モンゴルとレアメタルに関して協議したことは評価される。また中央アジア5ヵ国には、天然ガスや石油だけでなく、レアメタルやレアアース(希土類)など、非常に豊富な地下資源が埋蔵されている。安倍首相がアベノミクスを進める上で、これらの国々と接触を持つことは有意義なことだろう。
ただ、そもそも日本の首相が中央アジアを訪れるのは9年ぶりで、特にトルクメニスタン、タジキスタン、キルギス訪問は初めてのことだ。
筆者が日本政府関係者に、それとなく中央アジアの重要性を伝えたのは、90年代末のことだ。ようやく日本政府が動き始めたのは2004年で、当時の川口外務大臣が「中央アジア+日本」という対話の枠組みを立ち上げた。2006年になると当時の小泉首相がカザフスタンとウズベキスタンを訪問したが、それきり中央アジアへの首相訪問はほぼ途絶えていた。一方、「中央アジア+日本」の外務大臣級の対話はその後毎年ではないものの、引き続き行われており、昨年7月にキルギスで開催された第5回の外相会合には、岸田外務大臣が参加している。
また今年の3月には「中央アジア+日本」対話の第9回高級実務者会合に参加するため、中央アジア5ヵ国の外務次官が訪日した。
か細い絆ではあるものの、中央アジアとまったく縁がないわけではない。
しかし「本格化」するのが、いかにも遅すぎる。
中国はどう見ているか
10月23日の環球網(中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版)は、アメリカのブルームバーグ(Bloomberg News)の報道を借りて、「2014年の中国の対中央アジア投資は380億米ドルに達しているが、かたや日本は20億米ドルに過ぎない」と報道している。日本はインドネシアの高速鉄道で失敗したので、その損失を埋め合わせるためにも今回の中央アジア歴訪に力を入れていると分析している。
同日の人民日報は「中国経済網」に載った論評を転載する形で「中国は日本よりもっと強い。安倍が中央アジアに賭け事で金を賭けても対抗はできない」という論評を載せている。
今後、日本が進むべき道は?
今般、安倍首相はトルクメニスタンに2兆2千億円規模の経済協力を目指すことを決定し、タジキスタンではバッタのモニタリングや駆除などに約6億円のODA(=政府開発援助)の拠出をすると伝えている。
なにも中央アジアは中国の地盤と決まっているわけではないから、そこに向けて動き始めたのは悪いことではない。特に日本国民に利益をもたらすビジネスを展開するのは歓迎すべきだろう。