安倍首相中央アジア歴訪と中国の一帯一路
参加国は中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの6カ国だが、オブザーバーとして、多くの周辺国が参加を希望したり、様子見をしたりしながら待機している。
中国は胡錦濤政権時代から重慶をスタートラインとし、ウイグルを経由して中央アジアを結ぶ経済圏を「新シルクロード経済ベルト」と称して、新たな構想を動かしていた。
筆者はかつて中国の西部開発における人材開発に関する業務に関わっていたので、早くから中国のこの動きに接していた。そのため何度か新シルクロード経済ベルトに関して発信してきたが、日本では誰も関心を払わず、「遠藤一人が新シルクロード経済ベルトなどということばかり言っているが、何のことだか...」といった反応しかなかった。2014年4月に日経ビジネスオンラインで、「いま、ドイツと北京を直通列車が走っている」という(編集者が付けた)タイトルで、習近平政権の新シルクロード経済ベルトに関して発信したが、それでも関心を示したのは某テレビ局BSの某番組だけだった。このコラムのタイトルを付けたときも、筆者がつけた「新シルクロード経済ベルト」という単語を含むタイトル名を編集者が変えたのは、そのような単語を知っている日本人はいないだろうという配慮からだった。
言いたいのは、日本はそれくらい、「中央アジアと中国」がどれだけ緊密に結びついて動いているかに関して、注目しようとはしてこなかったということである。
新シルクロード経済ベルトが日本で突然脚光を浴びたのは、2014年11月に北京で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議で、習近平国家主席がAIIB(アジアインフラ投資銀行)とともに「一帯一路」という言葉を用いて、「21世紀の陸と海の新シルクロード構想」を提唱してからのことだ。
その間、中国は着々と中央アジアに陣地を固め、2014年における貿易額は450億米ドル(約5兆5千億円)に達しており、2014年12月、李克強首相がカザフスタンを訪問し、一国だけでも300億米ドル(約3兆6千億円)の投資額に相当するプロジェクトに調印している。中国は、この一帯は「自分の縄張り」とみなしているのである。そして首脳級の会談を頻繁に行っている。
安倍首相のモンゴルおよび中央アジア歴訪の意義
これに対して、日本はようやく本格的に動き始めた。
安倍首相は10月22日からモンゴルをスタートとして、中央アジア各国を歴訪し始めた。50社ほどの日本企業を同行させ、インフラをはじめ、医療やレアメタルの経済交流で中国を牽制するだけでなく、安全保障問題での存在感も示す方針だと、日本のメディアは伝えている。