【WEB再録】泥まみれのFIFA帝国
ブラッター会長は4選されたが、開催国選びには贈収賄の噂も
長期政権 FIFAの腐敗は桁外れだが、ブラッター時代のそれは目に余る(写真は先月末) Arnd Wiegmann-REUTERS
今は世の独裁者たちが失権と失脚の悪夢にうなされている時代。だが、あらゆる批判を退けて王座を守り抜き、取り巻きに囲まれた優雅な生活を続けている男もいる。
その名はジョセフ(ゼップ)・ブラッター。一国の元首ではないが、それ以上に力があると言えるかもしれない。世界のサッカー界を牛耳るFIFA(国際サッカー連盟)の会長選挙でただ1人の候補者だったブラッターは、6月1日の信任投票で4期目の当選を果たした。
彼が君臨してきた13年間は腐敗の噂でいっぱいだ。今年5月にはイングランド・サッカー協会の会長が議会で、18年のワールドカップ(W杯)開催地選考でイングランドを支持する見返りとして、FIFAの理事のうち少なくとも4人が賄賂を要求したと証言した。1人は250万ポンド(約3億3000万円)を要求し、別の1人は爵位を欲しがったという。
ブラッターはそんなスキャンダルに足をすくわれたりしない。政治家は彼の前にひれ伏し、スポンサーになりたい多国籍企業は彼と手を組みたがる。
今回の会長選にはアジアのモハメド・ビン・ハマム理事も立候補していた。しかしブラッターは、ビン・ハマムでは改革が進まないと批判。会長選での買収疑惑も浮上したビン・ハマムは立候補を取り下げてしまった。スポーツの世界に腐敗は付き物だ。厳しい競争がチームや選手の道徳観を麻痺させている面もあるだろう。しかしFIFAの腐敗ぶりは桁違いだ。
FIFAはW杯を主催し、莫大なスポンサー料と放映権料を手にする。昨年は10億ドルの収入があったが、その金がどこに行ったのかはよく分からない。
「ガラスの城砦」と呼ばれるチューリヒのFIFA本部が06年に完成したとき、ブラッターは「透明性を大切にした建物」と豪語したが、その透明性も気前のよ過ぎる会計部門や、会長に都合の悪い質問をした記者を出入り禁止にした広報部門には及んでいないようだ。
FIFAの会長ともなれば豪華なホテルに泊まり、プライベートジェット機に乗り、試合は貴賓席で政治家やロックスターと観戦する。こんな生活を手放したくないのは当然だろう。