ロシアにはダメ男しかいない!
男にはもう期待しない
いずれにせよ、手っ取り早い解決策は見つかりそうもない。ロシア女性の約49%は独身だ。ざっと3000万人の独身女性をどう救えばいいのか。
「年下の男性に目を向けるよう助言している」と、モスカルコワ議員は言う。国民的人気を誇る65歳の歌手アーラ・プガチョーワがお手本になるというのだ。プガチョーワは20年前に18歳年下の歌手フィリップ・キルコーロフと結婚して人々を驚かせた。その後キルコーロフとは離婚。27歳年下のマクシム・ガルキンと結婚した。
それにしても、あなたが若く美しく、スタイルがよく、芸術的センスもある女性で、周りには醜く強欲で傲慢な男たちしかいないとしたら、どんな気がするだろう。冒頭の母娘に話を戻そう。娘のエカテリーナはプロのバレエダンサーだ。母のエレーナとは違って、遠慮がちに小さな声で過去のトラウマを打ち明けてくれた。
18歳の新人ダンサーだった頃、「シャンパンとキャビア」をごちそうするから自宅においでと、上司に声を掛けられた。当時の彼女の上司はモスクワ音楽劇場バレエ団の芸術監督だ。
この手の誘いを断れば、キャリアはおしまいだと、先輩ダンサーたちが忠告してくれた。だがエカテリーナは断った。案の定、憧れの舞台でスポットを浴びるチャンスを失った。
当時、エカテリーナは「恐ろしく嫉妬深い」男と同棲していた。その後、2人の関係は悪化。エカテリーナは彼のために「工夫を凝らして料理を作る」ことや彼のローンを肩代わりすることに疑問を持ち始めた。結局、その男とは別れ、母親の住む寝室2室のアパートに戻った。
エカテリーナの話を聞いた後、モスクワの都心にリハーサルに行く彼女に付き合った。彼女の仲間のダンサーたちも、ほとんどが恋人募集中だ。
ロッカールームでは、ロシアのダメ男の話で盛り上がった。彼女たちはもはや男性に幻想を抱いていない。結婚して温かい家庭をつくることは、若い女性たちの夢ではなくなりつつある。
「女はみんな結婚して子供を産むものとされてきたけど、そんな考えはもう通用しない」と、エカテリーナはため息をつく。
マルシアで惜しげもなくカネを使う女性たちも同感だろう。
[2014年12月 2日号掲載]