ロシアにはダメ男しかいない!
「幸せ」を買う女性たち
「出生数に男女差はないが、30歳くらいになると男性人口が減り始める。労災や戦争、自動車事故などで死んでいく。年金受給年齢の65歳まで生きる男性は、全体の半分に満たない。その結果、孤独な老後を送っている女性が何百万人もいる」と、モスカルコワは指摘する。
モスクワのインテリ女性の多くが知っているように、結婚生活が永遠に続くとも限らない。何しろロシアの離婚率は50%前後に達している。
夫が妻を捨てるケースも多い。ウラジーミル・プーチン大統領も昨年6月、30年連れ添った元客室乗務員の妻リュドミラ(当時55歳)と離婚した。大統領府は否定しているが、前妻より25歳若い元新体操オリンピック金メダリスト、アリーナ・カバエワとの交際が噂されている。噂の真偽はともかく、大統領の支持率は下がっていない。
近年、ロシアの多くのエリート男性が妻を捨てて若い女性に走っている。今年2月には、モスクワのセルゲイ・ソビアニン市長が実業家の妻エリーナ(結婚生活28年)と離婚した。
最近は、プーチンの報道官であるドミトリー・ペスコフが妻を捨てて、フィギュアスケート(アイスダンス)の元オリンピック金メダリスト、タチアナ・ナフカに走ったというゴシップで持ち切りだ。
ペスコフの前妻エカテリーナは外国誌のインタビューに応じ、夫の「裏切り」を暴露した。先日は大物財界人であるウラジーミル・ポターニンの妻ナタリアも、外国誌に夫との離婚訴訟について詳細に語ったばかりだ。
成功したロシア男性は自由を謳歌できるが、「肝に銘じておくべきことがある」と、デンジンはくぎを刺す。「50歳を過ぎると、残りの生涯を独り身で送ることになりかねない。若い美女には見向きもされなくなる。幸せは金で買えない」
もっとも、裕福な女性の中には金で幸せを買おうとする人たちもいる。モスクワ中心部に最近オープンしたナイトクラブ「マルシア」は、たちまち金持ち女性の人気スポットになった。ふかふかのじゅうたんが敷かれた薄暗いスペースで、騒々しい音楽に合わせて裸同然の男たちが踊る。この猥雑な空間に、女性たちは優しく扱ってくれる若くてハンサムな男性を求めてやって来る。
1晩で使う金は、300〜2000ドル、もしくはそれ以上に上る。数週間前にはある40代の女性が3万ドル相当を支払い、女性の友人たちと若い男性の出会いの場をつくるためのパーティーを開いた。
29歳のメーキャップアーティスト、ユリア・カルランポビッチは常連客の1人だ。たいてい、日付が変わる頃に顔を出し、朝8時まで友達と飲み明かす。「メニューから男をオーダーする」には約1000ドル掛かるが、男性と何をするかは「相手の男次第」だと、カルランポビッチは言う。「ほかの店とは雰囲気が違う......ここでは、自分が求められ、愛されていると感じることができる」
オーナーのフランス人実業家ジャンミシェル・コスヌオーいわく、このような店は「パリではあり得ないが、モスクワでは決して珍しくない」という。
コスヌオーはモスクワで十数店舗のナイトクラブを経営している。どの店も順調だが、女性客相手のマルシアは飛び抜けて高収益を上げているそうだ。
「ロシアの男たちは女性の扱い方を知らない」と彼は言う。「うちの店に来る美女たちと付き合うより、男仲間で酒を飲むほうが楽しいと思って
いる」
コスヌオーの友人で、やはりロシアで仕事をするフランス人デザイナー、ジャック・ボンポリエールは違う考えだ。「ロシアの女性は世界一金持ち志向が強い。問題はそこだよ」