最新記事

健康

企業も導入!「痩せたら賞金」ダイエット

減量に成功したら報酬をもらえるプログラムがアメリカで人気上昇中

2013年5月20日(月)18時09分
イライザ・シャピロ

足取りも軽く 賞金をもらえるなら単調な運動にも精が出る?

 キャベツスープ・ダイエットの次は、野菜ジュース・デトックス......。流行のダイエット法はいろいろ試したけれど、まだスリムになれないというあなた、いまアメリカで大流行のダイエットに挑戦してみては? 名付けて「賞金制ダイエット」。スリムな体を目指す報酬付きプログラムが、今まで信奉されてきたダイエット法に取って代わろうとしている。

 これも新しい医療保険制度改革法のおかげだ。この法律の下で企業や保険会社は、減量や禁煙など健康を保つ努力をした社員に今までより多くの金銭的な見返りを与えることができる。

 しかも最近の研究によれば、職場でのこうした取り組みは他人と競わせたほうが効果は上がる。ミシガン大学の研究チームは、減量に取り組んだ2グループの社員を比較した。グループAに所属する社員は、減量に成功すると、100ドルもらえる。グループBは5人ずつのチームで月500ドルを成果に応じて奪い合うので、各自の取り分に差がつく。効果が大きかったのはグループBのほうだった。

 賞金付きの健康増進プログラムを提供する企業も増えている。09年創立のヘルシーウェイジ社もその1つ。創設者デービッド・ロッデンベリーのモットーは「健康には価値がある」だ。

家族ぐるみで挑戦するチームも

 健康増進産業にも価値が出てきた。ヘルシーウェイジの顧客は500社を超え、セブン・イレブンやオフィス・デポなど有名企業も参加している。

 ヘルシーウェイジの減量プログラムは3つある。「10%チャレンジ」は自分の意志に賭けるプログラム。150ドルを払い、6カ月間で体脂肪を10%減らせれば300ドルもらえる。「肥満度指数(BMI)プログラム」では、1年以内に正常値になれば最高1000ドルを受け取れる。

「マッチアップ」プログラムでは、5人ずつの2チームが対戦。減った体重の合計が上回ったチームが1万ドルを手にする。「高校の体育の授業とは逆」と、ロッデンベリーは言う。「みんな、できるだけ太った人にチームに入ってもらいたがる」

 ユタ州の住宅ローン会社で働くジョン・ウィッカーは約180キロあったが、ヘルシーウェイジのプログラムに家族ぐるみで参加して約35キロ減らし、賞金2000ドルを手にした。家族全体では計100キロの減量だった。

 ウィッカーはテレビの減量リアリティー番組『ザ・ビゲスト・ルーザー』にも出演したが予選で敗退し、ダイエットにやる気をなくしていた。「私には賞金というニンジンが必要だった」と、ウィッカーは言う。

エイズ予防にも効果?

 減量以外でも、現金は健康増進の動機付けに有効かもしれない。学術誌ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ヘルス・エコノミクスに最近発表された論文によると、メキシコシティの男性同性愛者を対象に、年にいくらもらえればHIV(エイズウイルス)の検査を受け、安全なセックスの講座に参加する気になるかと尋ねたところ、平均288ドルという数字が出た。

 HIVの感染予防をする人に金を払う制度ができれば、医療負担は大きく減るだろう。メキシコではHIV感染者1人の治療に年7000ドルを使っている。

 金で釣るのはおかしいという意見もある。「部屋のお片付けをした子供にキャンディーを与えるようなもの」と、全米科学健康評議会のジョシュ・ブルームは言う。「たった100ドルで減量できるなら、もらわなくてもできるはず。人の生活はそんなに安いものなのか?」

 だが、人間の決断がいつも理性的とは限らない。時には、たった100ドルが大きなきっかけになることもある。

[2013年5月14日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中