春節もヤバい?北京を襲う渋滞パニック
大気汚染も過去最悪に
調査会社LMCオートモーティブの試算によると、ナンバープレート割当制の影響で昨年の新車販売台数の伸びは4・6%に減速したが、今年は9%近くまで回復する見込みだ(新車販売台数は約1950万台)。各メーカーは新車販売台数の記録を更新する勢いを見せている。
GMは9月21日に今年の中国での販売台数が200万台を突破。「中国進出以来、年間200万台を超えるのはこれで3回目で、今回が最速記録だ」と発表した。
排ガスをまき散らす旧式の車から新車への買い替えは、環境と人々の健康を考えれば望ましいはずだ。しかし、大気汚染が改善する兆候はまだない。
北京のアメリカ大使館は肺や心臓に有害な直径2・5ミクロン以上の粒子状物質を計測しているが、今年は過去最悪の数字だった。WHO(世界保健機関)の統計によれば、北京の大気汚染は世界の首都の中でワースト10、中国の都市ではワースト5だ。この統計は中国政府発表の数字を使っているので、実際はもっと深刻だという説もある。
ちなみに中国で最も大気汚染がひどいのは甘粛省の省都・蘭州。94年にナンバープレート割当制を導入した上海はクリーンな都市ベスト10に入っている。
自転車に戻るしかない?
北京市当局は今年、公害対策を最優先課題にすると発表したが、共産党に忠実なチャイナ・デイリーでさえ「市はこの課題に立ち向かう準備がまったくできていない」と報じている。
大気汚染物質の排出が少ない電気自動車(EV)とハイブリッド車の購入には補助金が出るが、需要は振るわない。そこで政府は北京で両者をナンバープレート割当制の対象外とし、来年は官公庁でEVを試験的に導入する。一方で、北京市は地下鉄の路線延伸と新駅建設を猛スピードで進めている。
自転車の復活にも力を入れている。80年代には北京市民の80%が日常的に自転車に乗っていたが、10年には20%未満に減少。市当局は市内各所にレンタル自転車を配置し、15年までにこの数字を23%まで増やす計画だ。
とはいえ最大の問題は、高価な大型車を買って経済的地位を誇示したがる中国人が多いことだと、クリーンエネルギーによる交通政策に詳しい調査会社パイクリサーチは指摘する。
「中流、上流層の多くはアメリカ車やドイツ車を好む」と同社のリサーチ・ディレクター、ジョン・ガートナーは言う。「渋滞する道の運転は運転手に任せ、大型セダンの後部座席にゆったりするのが好きなんだ」
[2012年10月31日号掲載]