最新記事

英雄

アウシュビッツ、最高齢の生き証人の死

ホロコーストを生き延びたポーランド人男性が波乱に満ちた108年の人生を閉じた

2012年10月23日(火)16時33分
セーラ・ウルフ

消えない痛み 150万人が犠牲になったアウシュビッツ強制収容所 Kacper Pempel-Reuters

 ナチスドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を象徴するポーランドのアウシュビッツ強制収容所。150万人が虐殺されたこの「死の収容所」に送られながらも、ガス室送りを免れて生還した人々のなかで世界最高齢の生存者だった男性が10月21日、108歳で亡くなった。

 収容所の跡地に建つアウシュヴィッツ・ビルケナウ博物館の広報担当者によれば、男性の名はアントニ・ドブロボルスキ。小学校教師だった人物で、ポーランド北西部の町デンブノで死亡した。

 第2次大戦勃発前夜、ポーランドに侵攻したナチスドイツは、ポーランド人とその文化を根絶やしにするため、学校教育を小学校の4年間のみに限定した。これに反発した教師らが、教育システムを守るための地下組織「秘密教師組合」を結成。ドブロボルスキはユダヤ人ではなかったが、この組織に属する他の教師らとともに授業を継続して逮捕。1942年6月、アウシュビッツに身柄を送られたという。

 ドブロボルスキはその後、グロス=ローゼン収容所とザクセンハウゼン収容所に身柄を移され、45年のドイツ敗戦に伴って解放された。戦後は地元の学校で長年に渡って校長を務めたという。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

モルガンS、原油価格予想を引き下げ 過去の景気後退

ワールド

トランプ氏、フロリダ州で娯楽目的の大麻使用合法化を

ワールド

IAEA事務局長、イラン大統領との会談望む 米大統

ビジネス

米卸売在庫、7月は0.2%増 小幅下方修正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
特集:ニュースが分かる ユダヤ超入門
2024年9月17日/2024年9月24日号(9/10発売)

ユダヤ人とは何なのか? なぜ世界に離散したのか? 優秀な人材を輩出した理由は? ユダヤを知れば世界が分かる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ロシア国内の「黒海艦隊」基地を、ウクライナ「水上ドローン」が襲撃...攻撃の様子捉えた動画が拡散
  • 2
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 3
    メーガン妃が自身の国際的影響力について語る...「単にイヤリングをつけるだけ」
  • 4
    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…
  • 5
    歯にダメージを与える4つの「間違った歯磨き」とは?…
  • 6
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 7
    強烈な炎を吐くウクライナ「新型ドローン兵器」、ロ…
  • 8
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組…
  • 9
    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆…
  • 10
    「1日15分の運動」で健康状態が大きく改善する可能性…
  • 1
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレイグの新髪型が賛否両論...イメチェンの理由は?
  • 2
    森ごと焼き尽くす...ウクライナの「火炎放射ドローン」がロシア陣地を襲う衝撃シーン
  • 3
    国立西洋美術館『モネ 睡蓮のとき』 鑑賞チケット5組10名様プレゼント
  • 4
    【現地観戦】「中国代表は警察に通報すべき」「10元…
  • 5
    エルサレムで発見された2700年前の「守護精霊印章」.…
  • 6
    「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が…
  • 7
    中国の製造業に「衰退の兆し」日本が辿った道との3つ…
  • 8
    世界最低レベルの出生率に悩む韓国...フィリピンから…
  • 9
    「私ならその車を売る」「燃やすなら今」修理から戻…
  • 10
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンシ…
  • 1
    ウクライナの越境攻撃で大混乱か...クルスク州でロシア軍が誤って「味方に爆撃」した決定的瞬間
  • 2
    寿命が延びる「簡単な秘訣」を研究者が明かす【最新研究】
  • 3
    エリート会社員が1600万で買ったマレーシアのマンションは、10年後どうなった?「海外不動産」投資のリアル事情
  • 4
    電子レンジは「バクテリアの温床」...どう掃除すれば…
  • 5
    ハッチから侵入...ウクライナのFPVドローンがロシア…
  • 6
    年収分布で分かる「自分の年収は高いのか、低いのか」
  • 7
    日本とは全然違う...フランスで「制服」導入も学生は…
  • 8
    「棺桶みたい...」客室乗務員がフライト中に眠る「秘…
  • 9
    ウクライナ軍のクルスク侵攻はロシアの罠か
  • 10
    「まるで別人」「ボンドの面影ゼロ」ダニエル・クレ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中