激戦地ホムスの惨劇はどこまで「真実」か
ホムスのVJを数カ月かけてウオッチしてきたウェブスター大学(オーストリア)のアリソン・ラングリーによると、政権側を悪魔のように描き、国際的に受けのいいメッセージにこだわる彼らの姿勢は、多くの紛争に共通するものだ。弾圧の恐怖にできるだけ焦点を当て、反体制武装勢力のことはなるべく取り上げない──ラングリーの論文には、そう語るホムスのVJの証言が収録されている。
テラウィは本誌の取材のために連絡を取ったマニに、メールでこう返答した。「タイヤを燃やしたのは、ババアムルが猛烈な砲撃を受けていて近づけなかったためだ。私たちは冷血なアサド政権に殺されている。煙に覆われたホムスの空を見せて、(政権側の)砲撃の事実を世界に知らせようと思った」
「彼らは必死で世界にメッセージを伝えようとしている」と、マニは言う。「でも脚色は必要ない。(砲撃は)そこらじゅうで起きているんだから」
テラウィの映像リポートが終わった後も、燃えたタイヤの煙はまだ渦巻いていた。マニはそれを映し続ける。テラウィがまだ屋根の上に立っていたとき、耳をつんざくような爆発音がとどろき、マニのカメラが揺れた。近くで砲弾が破裂したのだ。
[2012年4月11日号掲載]