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目からウロコの感情と性格の科学

2012年4月27日(金)22時21分
リチャード・デービッドソン(ウィスコンシン大学マディソン校教授) シャロン・ベグリー(科学ジャーナリスト)

 鬱の患者(「立ち直り」の指標で「回復が遅い」に分類される人々)は、がっかりしたり失敗したりすると、徹底的に打ちのめされてしまう。そんな人は、気付きの瞑想によって前頭前皮質(特に左側)を活性化して、扁桃体を抑制する信号の通り道を強化するといい。そうすれば1度の失敗にこだわる原因(負の気持ちの連鎖)を弱めて、早く立ち直れるようになる。

 逆に、他人や自分の痛みをもっとゆっくり受け止めたいという人は、前頭前皮質と扁桃体の結び付きを弱める必要がある。それには自分や他人の痛み、あるいは負の感情に気持ちを集中させることだ。するとその感情を長持ちさせて、痛みや苦悩に関わる回路を活性化できる。

 とはいえ、重要なのは感情スタイルを極端に変えることではない。われわれがやろうとしているのは、ゆっくり立ち直る人をすぐに立ち直るタイプに変えることではないし、悲観的な人を楽観的に変えることではない。

 感情スタイルを形成する脳の活動パターンや、それぞれの要素のつながりは人によって大きく異なる。重要なのは、どういうやり方が自分に合っているかを知ることだ。

(本稿は両筆者の共著『The Emotional Life of Your Brain』を抜粋・再編したもの)

[2012年3月28日号掲載]

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