最新記事

北朝鮮

ミサイル打ち上げ後に迫る核実験の危機

北朝鮮が地下核実験の準備を進めているというリークの裏には、総選挙を意識した韓国政府の思惑も

2012年4月10日(火)17時00分
ジェシカ・フェラン

おとり 国際社会がミサイル打ち上げを非難すれば核実験の口実になる?(4月8日) Bobby Yip-Reuters

 北朝鮮が予告したミサイル打ち上げが刻一刻と迫るなか、新たな危機が浮上している。韓国の情報機関によれば、北朝鮮は3度目となる新たな核実験を極秘に計画しているという。
 
 8日に発表された同情報機関の報告書によれば、最近撮影された衛星写真から、北朝鮮が2006年と09年に核実験を行ったのと同じ咸鏡北道・豊渓里の実験場で核実験の準備を進めていることがわかったという。

 アメリカは北朝鮮に核実験を行わないよう警告し、中国に対しても北への働きかけを要請した。

 現地では新たな地下トンネルが掘られており、作業は「最終ステージ」に入っているとされる。さらに、他の地域から運ばれてきた土砂がトンネルの入り口付近にうず高く積まれている。報告書によれば、地下核実験に先立ってトンネルを塞ぐために大量の土砂が必要だという。

 この報告書が発表されたのは、北朝鮮が長距離ロケットの発射準備を進めている最中のこと。北朝鮮側は人工衛星打ち上げ用のロケットだと説明しているが、国際社会は長距離弾道ミサイルの発射実験とみている。

 韓国に言わせれば、北朝鮮はまず長距離ロケットを打ち上げて国際社会からの非難を集め、それを口実として新たな核実験を強行するつもりだという。

 もっとも、韓国側の対応にも隠された意図があるのかもしれない。韓国は4月11日に総選挙を控えており、政府は北朝鮮の動向を利用して保守派の支持をとりつけようとしているとの指摘もある。

 たとえば韓国の左派系新聞ハンギョレは、報告書が発表されたタイミングに疑問を呈している。地下トンネルの掘削作業が始まっていることを、情報当局は少なくとも1年前には把握していたからだ。

GlobalPost.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中