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中国政治謎だらけの男、胡錦濤の頭の中
問題山積の公式訪米でも胡錦濤の考えは霧の中。知られざる経歴が語る「最後の共産党的指導者」のつくられ方
欠点? 大国の指導者としては個性が乏しいと言われる胡(左、右は後継候補の習) Jason Lee-Reuters
中国の安徽省にある龍川という小さな村に、胡一族の古い祠堂が立っている。立派な建物を外から見る限り、かつてこの国で禁じられていた竜の装飾は見当たらない。ところが門をくぐって後ろを振り返ると、それは見つけられる。大きな木の門の内側に、手の込んだ9頭の竜の彫刻が刻まれているのだ。
祠堂が建てられた明の時代には、皇帝以外がこのような彫刻を飾ることは許されていなかった。もし当時の宮廷が胡一族の隠された竜の存在を知れば、関係者はことごとく投獄もしくは処刑される可能性があった。しかし、野心を象徴する竜のシンボルが注意深く内側を向いていたおかげで、胡一族は無事に生き延び、繁栄することができた。
その教訓は、胡一族の48代目に当たる胡錦濤(フー・チンタオ)もしっかり学んでいる。胡は、中国の最高実力者だったトウ小平の「能力を隠し実力を蓄えよ」という言葉を実践している。
国家主席に就任して8年近くになるが、胡の人物像はいまだにほとんど謎に包まれている。毛沢東やトウ、江沢民など強烈な個性を発散した歴代指導者たちとは極めて対照的だ。1月18〜21日のアメリカ公式訪問によって、胡を取り巻く謎は解消されるのだろうか。
中国側の思惑によれば、胡の訪米の目的は政策を論じることではない。米政府は、ハイレベル軍事交流の再開、アメリカ製品の輸出拡大、北朝鮮の核問題などを話し合いたいだろう。中国政府も、アメリカの台湾への武器売却をやめさせ、アジアでの米軍の配備を縮小させたい。それに、両国間には人民元の為替レート問題という懸案もある。
しかし中国の最優先事項は、あくまでも完璧な外交ショーを演出し、胡の存在を強く印象付けることにある。外交を進展させるためには、両国が互いに敬意を抱くことが欠かせないという認識があるのだ。...本文続く
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[2011年1月26日号掲載]