独立に沸くスーダン南部を待つ艱難辛苦
石油資源をめぐる南北対立が起きる
北部から南部に向かっては、さらに大きな民族移動が起きている。ハルツームの家を捨てて南部に戻った出身者は12万人以上。数十年に及ぶ北部での安定した生活を捨てるのは、純粋な愛国心からだ。
住民の流入は南部が収容できる限度を超えている。北バール・エル・ガザル州には昨年、北部の爆撃を逃れて5000人がやって来た。そこに最近、2万2000人の移住者が新たに加わった。水や食料に乏しい旅を経てきた彼らの多くは、病気で弱っている。
「世界は分離・独立の住民投票にばかり注目しているが、我々が目にしているのは人道面での危機的状況がさらに悪化し、地元社会の許容量を圧倒しようとしている状況だ」と、スーダン南部で難民支援団体「国際救済委員会(IRC)」の活動を担当するスーザン・パーディンは声明を出している。
南部と北部が帰属を争っているような境界付近地域では、アラブ系と非アラブ系の間の緊張が高まっているが、特に石油資源のあるアビエイでは対立が激化している。アビエイでは分離・独立の住民投票とは別に、南北の帰属を決める独自の住民投票が予定されていたが武力衝突の可能性から実施が延期された。アビエイの帰属をめぐる対立では、少なくとも30人が死亡している。
しかしかつては南北の帰属をめぐって双方が衝突し、400人以上が死亡したナイル川のほとりの港マラカルでは穏やかな投票日を迎えた。ナタル・チャールズ(40)は午前3時に家を出て、スーツ姿で投票所になっている小学校に向かった。
「投票所に着くと友人ら50人がもう並んでいた」と、チャールズは言う。「彼らに言われたよ。『どこに行ってたんだ? 遅いぞ』って」