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サイエンス「最新」脳科学のウソとホント
お手軽な脳トレやビタミン剤などのハウツーは多くが偽情報。2011年、ここまで分かった脳を伸ばすのに本当に必要なこと
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甘くない脳科学 賢くなれるゲームには限られているし脳トレの効果にも個人差があることを知るべき
能のメカニズムが、筋肉のそれのせめて半分でも解明できていれば、みんなもっと賢く(そして幸せに)なれるはずなのだが......。
筋肉を繰り返し使うと、化学的・電気的な一連の反応によって筋線維が強化されることは知られている。だから「たったの8秒で腹筋が見違えるように!」みたいな宣伝文句の嘘は簡単に見抜ける。
脳神経についてはどうか。ちまたには「一発で頭が良くなる方法」なるものがあふれている。脳を鍛えるゲームや各種の瞑想法もある。ブルーベリーを食べろとかガムをかめとかの説もあり、友達付き合いを増やすと知能も創造力も向上するという素敵な仮説もある。そんなことで賢い節税が可能になり、アメフトの複雑なルールも理解できるようになるというのだ。
実を言えば、21世紀の神経科学もいまだに「頭が良くなる」プロセスを解明できていない。なのに、すっかり解明できたかのような偽情報が氾濫している。試しにグーグルで「脳トレ」を検索してみればいい。もっと本格的に、生物医学系の専門論文データベースで「認知力向上法」を検索してみるのもいい。どちらであれ、ヒット数は莫大なものであるはずだ。
しかし信頼できる情報は少ない。まじめな研究論文でも、その多くは人々の行動を観察し、比較した結果から一定の答えを推定しているにすぎない。簡単に言えば、被験者を2つのグループに分け、一方には特定の活動をさせる。その後、双方に同じテストを受けてもらい、正答率の変化を調べるわけだ。
それでも、ある活動をしたグループの成績が向上したとしても、それが当該活動のおかげとは言い切れない。スポーツジムのロッカーをよく使う人は、まったく使わない人よりも概して健康だろう。ならばロッカーが健康増進のカギなのか。
違う、と私たちが言えるのはそれなりに運動生理学のメカニズムを知っているからだ。しかし認知力向上の仕組みについては、ほとんど知識がない。だから偽情報に踊らされやすい。...本文続く
──ここから先は1月6日発売の『ニューズウィーク日本版』 2011年1月12日号をご覧ください。
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他にも、中国のユダヤ教ビジネス書ブームについてリポートした
■「ユダヤ教の聖典はビジネス虎の巻?」など、読み応え満点。
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[2011年1月12日号掲載]