ロシアにとって法律は破るためにある
善悪より「独立」国家のメンツが大事
外圧をものともせず、こうまでロシアが無法者に甘い顔をしたがるのはなぜか。元ソ連大統領のミハイル・ゴルバチョフは昨年、本誌とのインタビューで、「アメリカが私たちを、まるで敗戦国のように扱ってきた」せいだと語っている。「今の私たちは、そうじゃないことを証明しようとしている。負けちゃいないぞ、こちらにはこちらのやり方がある、アメリカには屈しないぞ、と」
ゴルバチョフの解釈に従えば、ロシアが悪党どもの肩を持つ理由はただ1つ。ロシアにとっては国際社会の良き一員として認められるより、揺るぎない独立国家だと認められることのほうがはるかに重要だからだ。
だがそこには、もう1つ別な、より救い難い理由がありそうだ。自らの暗部から国際社会の監視の目をそらそうとする、官僚たちの狙いが透けて見える。殺人犯や腐敗政治家をかくまっても、国家にとっては何の得もない。だがマグニツキー事件の例で明らかなように、国際的な司法機関の監視を受けることになれば、官僚たちが失うものは多い。そのときは彼らも、ロシア式の腐敗した茶番劇の裁判ではなく、本当の正義によって裁かれることになる。
[2010年10月27日号掲載]