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イラク戦争はどうアメリカを弱らせたか

2010年9月1日(水)17時37分
アン・アップルボム(ジャーナリスト)

■世界の大国としての自覚

 注目している人はあまりいないが、原油価格の高騰はロシアやベネズエラを増長させた。というのも、イラク戦争によってアメリカは大国として物事を考える能力を失ったからだ。

 11年にアメリカがイラクから完全撤退したとしても、あの国で10年近く身動きが取れずにいたことになる。その間にも中国は真の大国としての地位を確立し、南米諸国は極左に変節し、ロシアは天然ガス供給をかさに「パイプライン政治」で欧州に対して影響力を行使している。これらの動向にジョージ・W・ブッシュ政権はほとんど注目を払わなかったが、オバマ政権はそれ以上に軽視している。

■負傷米兵をケアする力

 最後になるが、アメリカ国内で見落とされている問題も若干ある。私が特に心配なのは、負傷兵のケアだ。歴史的に見れば、4400人というイラクでの米兵死者数は少ないほうだ。ベトナム戦争では6万人近くが亡くなった。だが医療技術がけた外れに進化したこともあって、重傷を負いながらも助かり、生涯を通して高度な医療的・心理的ケアを必要とする兵士の数はかつてないほど多い。
 
 楽器を使ってリハビリを行う「ミュージッコル」のような画期的プログラムを計画し、資金を用意するには官僚たちの尽力が求められる。しかし約7年半にわたるイラク戦争と継続中のアフガニスタンの戦いで、当然のことながら彼らも疲弊している。

 ここまでくどくどと述べてきたが、要するにイラク戦争の評価は今後10年間の課題となるものだ。来週どうこうなる話ではない。中国の周恩来(チョウ・エンライ)首相はフランス革命の長期的影響うを尋ねられて、リチャード・ニクソン米大統領にこう言ったそうだ。「判断するのは、まだ時期尚早だ」

 オバマは周の言葉を思い出すべきだろう。

Slate.com特約)

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