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内部告発サイトウィキリークス創設者レイプ容疑の怪
米軍機密文書のスッパ抜きで米政府を激怒させたジュリアン・アサンジを、スウェーデンの検察が強姦容疑で指名手配した後、すぐ撤回したのはなぜか
狙われた? ウィキリークス創設者のジュリアン・アサンジ(8月14日、スウェーデンのストックホルムで) Scanpix Sweden-Reuters
まさに、スウェーデンを舞台にした世界的な大人気ミステリー「ミレニアム」シリーズを地で行く展開だ。スウェーデンの検察当局は8月21日、この夏アフガニスタン戦争に関する米軍機密文書を暴露したことで一躍有名になった内部告発サイト「ウィキリークス」の創設者ジュリアン・アサンジをレイプと性的虐待の容疑で指名手配したと発表。しかしその後間もなく、アサンジの指名手配を撤回するという声明を出した。
スウェーデン検察のウェブサイト(英語ページ)に掲載された文書には、こう記されている。「ジュリアン・アサンジがレイプを行った疑いはないと、エバ・フィンネ主任検察官は判断した。従って、アサンジはもはや指名手配状態にない」
思わぬ展開の連続で......
始まりは、20日の夜だった。スウェーデン検察がレイプ容疑に関連してアサンジに事情を聞きたいと考えていると、地元のタブロイド紙エクスプレッセンが報じたのである。
このニュースが世界中を駆け巡ると、ウィキリークスはツイッターに複数の書き込みを行い、疑惑を否定。早い段階の書き込みでは、「卑劣な手口の標的になるだろうと、警告されていた。やはり、これがその第1弾だ」と反発。その後、アサンジ自身のものとされる書き込みでは、「容疑には根拠がない。この時期に逮捕状が出されたことには、深い当惑を感じる」と書いていた。
ところが不可解なことに、この数時間後にウィキリークス公式ブログに掲載された声明は、ツイッターの書き込みより腰が引けて見える。「ウィキリークス・チーム」名義の声明文はこう書いている。「8月21日土曜日、当プログラムの創設者で広報担当の1人であるジュリアン・アサンジがレイプ容疑を掛けられていることを知った。我々は、容疑の深刻さを深く憂慮している。我々、ウィキリークスのスタッフは、ジュリアンを高く評価しており、全面的に支持している」
この声明文は最後に、「ジュリアンが疑いを晴らすことに力を注ぐ間も、ウィキリークスは通常どおりの活動を継続する」と記している。アサンジに対する指名手配を撤回すると、スウェーデン検察当局がウェブサイト上で明らかにしたのは、ウィキリークス公式ブログの声明文が掲載されたのとほぼ同じ時間だった(スウェーデン検察当局もアサンジも取材要請に返答していない)。
陰謀論にますます拍車?
アサンジは言ってみれば放浪家型の人物で、同僚たちによれば居場所を把握したり、連絡を取ったりするのが難しいという。さまざまな報道によると、スウェーデンを訪れていたのは、スウェーデンの野党・社会民主党の会合で講演するためだったとされる。またアサンジは、ウィキリークスがスウェーデンの内部告発者保護法に基く特別な免責権を得るために、出版免許の取得を申請しようとしていたという(ウィキリークスは、スウェーデンにサーバーを置いている)。
ウィキリークスの支持者とアサンジ自身は、ただでさえ自分たちが狙われているという陰謀論的な被害者意識を抱いている。今回のセンセーショナルな騒動で検察の方針が二転三転したことにより、そうした傾向にますます拍車が掛かることは間違いないだろう。