民主党内紛で日米関係に危機
ヒラリー・クリントンとの外相会談キャンセルでまたも混乱を露呈した鳩山政権。オバマ訪日を来週に控えても、緊張打開の糸口はまだ見えない
同盟に陰り 11月12日のオバマ訪日にも実りは期待できない(写真は9月24日、G20首脳会議で) Philippe Wojazer-Reuters
外交儀礼を非常に重視する日本にとって、いったん設定した閣僚レベルの会談をキャンセルするような事態はまずありえない。だが11月2日、米国務省は6日に予定されていたヒラリー・クリントン国務長官と岡田克也外相の会談を見送ると発表した。
この外交上の混乱は、日米同盟に地殻変動が起きている現状を象徴している。日本の民主党は、対米関係の見直しを掲げて9月に政権を取った。だが与党になった今、彼らはどの程度まで変化を起こすべきかという問題をめぐって党内でもめている。
日米外相会談がキャンセルされた一件も、最近の日米関係を「危機」と呼ぶアメリカ側の懸念を深めるだけだ。ある国務省高官によれば、クリントンは岡田の訪米が可能になった場合に備えて6日のスケジュールをまだ空けているという。
日本の報道によれば、岡田は米軍普天間飛行場の移設問題について、12日のバラク・オバマ大統領の訪日前にアメリカ側と調整しかったとされる。だが鳩山由紀夫首相は、この問題がまだ日本政府内で検討されている段階で岡田がアメリカと協議することを嫌い、訪米にストップをかけた。
また、10月20日に訪日したロバート・ゲーツ国防長官の発言によって混乱した関係を立て直したいという思惑は、日米双方に共通している。普天間飛行場の移設問題はアメリカにとってはマイナーな問題だが、日本人にとっては感情を揺さぶられる重要課題。ゲーツは計画どおりに移設を進めるよう強硬に迫ったが、この対応はアメリカでも普天間にこだわりすぎだったと考えられている。
米政府、今は「一喜一憂しない」方針
もっと広い視点で考えれば、日米関係の重心が国防総省から国務省に移っているのかもしれない。岡田は普天間問題に絞ってクリントンと協議したかったようだが、クリントンはより広い目標を想定していた。日本の新政権にはアフガニスタンから中国まで幅広い戦略的課題に取り組んでほしい、というのだ。
つまり、オバマ政権は基地の移転という細かい軍事課題に絞らず、より広範な戦略課題について日本政府と議論したがっている。なのに、日本では閣僚が外交政策をめぐって対立を続けており、オバマ政権は日本との対話を進められない。
鳩山も外交政策、特に日米同盟については党内や閣僚の間で複雑な対立があると認めている。岡田にとっては鳩山が困難な立場に立たされるがほうが都合がよく、そのために訪米をキャンセルしたという見方もできる。
ワシントンで対日政策に携わる高官らは、2つのアプローチを併用している。一つは「しばらく様子を見る」戦略。民主党政権が内輪の議論を収束させ、政策の落とし所や交渉スタンスについてアメリカと話し合う準備ができるまで待つのだ。
2つ目のアプローチは「瞬きをするな」。民主党の指導層がアメリカを批判する言葉や矛盾する見解を述べても、いちいち大げさに反応しないという意味だ。また、日本政府が政権運営に慣れるまで、アメリカ側の主張を強く押し付けないよう留意している。「アメリカは、日本が今後どの道に進むのかという点を提示するのを待っている」と、対日政策に携わる米高官は語った。
オバマ政権の日本担当者の間には、日米関係の「危機」についての報道はあまりに大げさだという感覚もある。いくつものテーマが議論のテーブルに上がっているのはかつてない事態だが、それは悪いことではないという認識だ。
「どの問題もニュースになりえるが、どれも手に負えないほどの問題ではない」と、先の高官は言う。「日米は今も根本的な次元で依存しあっている」