クリントン訪朝で金正日の高笑い
金正日が待ち望んだ「承認印」
ブッシュは手のひらを返したように北朝鮮との外交をすべて中断。金政権と交渉することで同政権に正当性を与えるつもりはないことをはっきりさせた。02年には、ブッシュは共和党上院議員たちとの私的な会話の中で金をこう呼んでいる――「夕食の席で駄々をこねる子供」のような、憎たらしい「小人」。こうしたブッシュの金に対する皮肉は、本誌などの欧米メディアで何度か報道された。
それ以来、米朝関係は最悪の状態が続き、膠着状態に陥った。06年と07年には北朝鮮の核開発凍結合意に近づいたが、これも再び頓挫。北朝鮮が核兵器製造と使用済み核燃料について詳細な情報を提供するのを拒んだからだ。両国間の緊張は、北朝鮮による2回目の核実験と一連のミサイル発射、さらに6月にアメリカ人記者2人に12年の重労働刑が下されるなか、ここ数カ月間で頂点に達していた。
今回のクリントン訪朝について、米政府も国務省も声明を出していない。オバマ政権は5月に行われた2回目の核実験を受け、国連の新たな制裁決議案を主導するなど断固とした態度をとってきた。病を患う金正日も、後継者である息子の権力強化を目論んでか、米政府に対する態度を硬化させてきているのは間違いない。
それでも、クリントンの訪朝は金にとって大きな意味をもつ。10年以上も切望してきた、政権に対する承認を得たようなものだからだ。オバマ大統領が誕生し、妻ヒラリーが国務長官という米外交トップの座に就いて以来、ビル・クリントンは表舞台からすっかり姿を消していた。だがこれでやっと、自身がやり残した北朝鮮との交渉成立に向けてチャンスをつかんだようだ。