最新記事

投資

すべてのマネーは中国を目指す

2009年7月29日(水)14時23分
ラーナ・フォルーハー(ビジネス担当)

 景気が回復し始めたばかりだというのに、既に次のバブルを心配している専門家もいる。経済の復調はアメリカ人の大半には縁遠く感じられるだろうが、一部のヘッジファンドや機関投資家は莫大な資金の使い道を探している。

 彼らは世界経済を牽引する中国にこぞって資金を投入。中国の今年のGDP成長率は8%と見込まれ、他の主要国を圧倒している。上海株式市場の指数は年初から60%も上昇し、取引の規模はニューヨーク株式市場と肩を並べる。

 不動産市場も過熱気味だ。その一因は銀行の貸出額の大幅な増加にある。昨年12月には、前年比で1000%も膨れ上がったのだ。

 だがこれには、中国の銀行関係者が不良債権への懸念を募らせ始めた。格付会社フィッチは5月、「過度のリスクを負っている」銀行が損害を出す恐れがあると警告した。

 1次産品でバブルが起きそうな気配もある。原油や金、鉱物などの投資は、個人投資家にも売買しやすいETF(上場投資信託)の形が取られることが多いため、投資機会が増えている。そのため、原油など天然資源の価格が前年同期の半分に下落している今も、資金はどんどん注ぎ込まれている。

 投資家たちはそれぞれの思惑に従って、中国経済を過熱させている。天然資源に強欲な中国が価格を高騰させ続けるというのが強気筋の見方。中国経済の破綻によって世界が大きな痛手を負うとみる弱気筋は、不動産など有形資産に投資している。

 中国がくしゃみをすれば、世界が風邪をひく時代になったということか。

[2009年8月 5日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中