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アフリカケニアの売春婦とウイグル弾圧
1年半前のケニア暴動が今、首都から遠く離れた地方の経済をむしばみ、女性たちが収入を補うために無防備な売春に走っている。中国・ウイグルでの暴動も、何年もたってから経済的な混乱が顕在化する恐れがある
糊口をしのぐ ケニアの売春婦は、生活のためよりハイリスクの性行為を受け入れざるを得なくなっている(首都ナイロビの街頭) Reuters
本誌記者のラーナ・フォルーハーやバレット・シェリダンが最近書いているように、中国・新疆ウイグル自治区の騒乱は様々な理由で注目に値する。その筆頭に挙げられるのは、中国経済に及ぼす悪影響だ。ウイグルは経済的に隔絶された辺境の土地だが、そこでの政治的混乱は先々、中国の経済全体に明確な影響を与えかねない。
同様のことが、ケニアの売春についても言える。
ケニアでは、2007年12月の大統領選の結果をめぐって2カ月以上も暴動が続き、国中の道路や市場がほとんど麻痺状態に陥った。カリフォルニア大学の研究者2人がまとめた報告書によると、その影響は暴動による直接の経済被害を免れたケニア西部のブシア県にまで及び、商業活動に直接的かつ長期的な影響を与えている。まず商取引が減少し、収入が減った。食料や石鹸、携帯電話用のプリペイドカードなど生活必需品の価格が跳ね上がった。ここまでは短期的に予測もできるが、影響はこれだけに留まらない。
コンドームを使わない売春が増加
ブシアでは売春が恒常的に行われている(15~49歳の女性全体の12%が売春で収入を得ている)ことから、研究者は売春をしている女性の経済活動や性行動も調査した。本当の問題は、ここから始まっていた。他の収入が減ったために、多くの女性がコンドームを使わないセックスなどよりハイリスクだが金になる売春を行うようになっていた。その傾向は政治的な危機が終わった後も続いている。
HIV(エイズウイルス)の感染率が天文学的に高いこの地域では、ここからまったく次元の違う問題が生じてくる。先の研究者は次のように述べている。
社会的混乱に伴う市場の機能不全は、貧しい女性による無防備な売春行為の大幅な増加をもたらした。それがエイズの感染拡大につながって、住民全体の長期的な健康状態に悪影響を及ぼすかもしれない。
我々が実証できる暴動の影響はごく一部に限られるが、混乱の規模は著しい。このことは、政情不安が社会的混乱を通じて長期的な発展を阻害するかもしれない可能性を示している。他にも、数量化したりわれわれが認識するのさえ困難な形で発展に悪影響が及んでいるかもしれない。
もちろんケニアと中国を直接比較することはできない。だが広い意味では、ウイグルの暴動が拡大するなかで覚えておくべき教訓がここにはある。政治経済の混乱は、事態が鎮静化してから何年もたって顕在化する影響を隠し持っているかもしれない、ということだ。
[米国東部時間2009年07月10日(金)14時36分更新]