韓国語翻訳者にはどうやってなるの? 大ベストセラー韓国エッセイの翻訳者に聞く、翻訳という仕事の魅力
──翻訳の仕事で苦労や大変なことは何でしょうか
つねに日本語を磨き続けなければならないところです。
長く韓国に住んでいるため、今の日本で使われている日本語に触れる機会が必然的に少なくなっています。ですから「死語」を使っている事態にならないように気をつけています。
また、小説の舞台となった街へ行ったり、料理やスポーツでも経験が翻訳のバックボーンになり、クオリティにもつながります。とは言え、実際にはいつも納期に追われているため、なかなかその時間がとれずにもどかしいのですが......。
──逆に楽しいことややりがいは何ですか?
翻訳者に共通していると思いますが、ひとつの単語とがっつり組み合って、「ああでもない、こうでもない」と頭をひねること自体が楽しいです。そして「これだ!」という訳語が浮かんだときの快感は病みつきです(笑)。
──翻訳の仕事からの気分転換は何ですか?
煮詰まったときは、ラジオ体操をしています。3分でだいぶ頭も体もスッキリします。しかし、1時間に何度も体操をするようになったら、思い切ってその日の作業は切り上げています。
──翻訳の魅力について教えてください。また、今後のお仕事についても教えてください
翻訳の魅力は、ひとつの作品ととことん向き合って深い読書ができることです。ひとつの単語と何日も格闘するのはしんどいのですが、とてもぜいたくな時間です。特に美しい原文にひたっていると、それだけで癒されます。
また、調べものをする中で、自分のアンテナだけでは引っかからなかったであろう本に出合える幸せもあります。今後は韓国の本を邦訳するだけでなく、日本の本を韓国語に訳す仕事もしてみたいと思っています。
──最後に改めて、『今日の心の天気 気持ちをやさしく整える366日の言葉』の魅力を教えてください
訳していて、「これは名言だなぁ」と思うページがたくさんありました。一文一文が短いだけに、そこに光るダンシングスネイルさんの語彙センスをどうすれば日本語で再現できるかで何度も頭を悩ませました。
1年はあっという間で、変わり映えのしない毎日だったと感じることもあります。しかし、この本をめくると季節の移ろいや、その中で少しずつ変化してきた自分がいること、あるいは変化しない自分の軸があることに気づきます。
どのページにも、心をほぐすおまじないのような言葉が詰まっています。ですから日付どおりに読んでも、ぱっと適当に開いたページから読んでもいいと思います。
贈り物にもぴったりの本です。いつでもすぐに手に取れるところにおいて、心の癒しにしていただければ、訳者としてこれほど嬉しいことはありません。
生田美保(Miho Ikuta)
1977年、栃木県生まれ。東京女子大学現代文化学部、 韓国放送通信大学国語国文学科卒。 訳書に、ファン・インスク 『野良猫姫』 (クオン)、キム・ヘジン『中央駅』(彩流社)、イ・ミョンエ『いろのかけらのしま』 (ポプラ社)、ダンシングスネイル『怠けてるのではなく、充電中です。』 、『ほっといて欲しいけど、ひとりはいや。』(ともにCCCメディアハウス)、『幸せになりたいけど、頑張るのはいや。』(SBクリエイティブ)などがある。
『今日の心の天気 気持ちをやさしく整える366日の言葉』
ダンシングスネイル[著]/生田美保[訳]
CCCメディアハウス[刊]
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