「人間扱いされていない」80歳の新人女性作家が「怒れる高齢女性」を描く理由
Old Woman Power
人間らしい高齢女性を描きたいと語るキャンベル(右はデビュー短編集の『猫のブラッシング』) PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. AUTHOR PHOTO BY IAN WILLIAMーSLATE
<「セックスの要素が抜け落ちている」イギリスの新人作家J・キャンベルは高齢女性のイメージを覆す作品を描く。年寄りの強みは誰かを気にする必要もなく、自由であることなのだから>
80歳のイギリス人作家ジェーン・キャンベルを「遅咲きの作家」と呼ぶ人もいるかもしれない。それでも、最後まで花開かない人に比べれば幸運と言うべきなのだろう。
この夏に出版されたデビュー短編集の『猫のブラッシング』も、さっそく批評家の間で好評を得ている。
80歳の新人作家としてデビューするのは、どのような経験なのか。なぜ、怒れるセクシーな高齢女性作家が必要とされているのか。スレート誌のヘザー・シュウィドルがキャンベルに話を聞いた。
――これまでもずっと作品を書いていたのか。それとも最近になって書き始めたのか。
子供の頃から詩や小説の類いを書いていた。でも、真剣に執筆に取り組んだのは(短編集の表題作である)「猫のブラッシング」が初めて。77歳のときだった。
――「猫のブラッシング」を書いたときは、何かがひらめいたのか。
そのときは、バミューダ諸島にいる長男の家に滞在していた。ある日、息子も彼の妻も外出して、家に一人でいたとき、アイデアが浮かんできた。その後4日間、私は執筆に没頭した。そして書き上がった作品を見て、「素晴らしい」と思った。
――著作権エージェントからは、高齢の女性をテーマにした作品を書き続けるよう助言されたとのことだが、執筆に苦労したことはないか。
その助言は、私が高齢女性だからという面もあったと思う。私が書いてきた作品の多くは、怒りに基づいている。
(20世紀イギリスの作家)ドロシー・セイヤーズが「女性は人間か」という文章を書いている。女性も人間だと訴えることが目的だった。
私に言わせれば、高齢女性はとりわけ人間扱いされていない。その点では、おそらく高齢男性とも扱いが違う。高齢の女性も立派な人間だと、私は作品で強調しようとしてきた。