失業者数は男性の4倍! パンデミックで女性はどれだけ損をしている?

A STAGGERING PRICE

2021年07月10日(土)14時59分
エミリー・ペック(ジャーナリスト)

最初は3カ月間の有給休暇を取得したが、最終的には退職を余儀なくされた。「ほかに選択の余地がなかった」と、コールグエデスは言う。今も息子の看護体制が安定しないため、フルタイムの仕事に復帰できる状況にはまだない。

マドウィッツの推計によると、コールグエデスが今後5年間仕事に就かなければ、生涯賃金は少なくとも36万9934ドル減る。しかもこれとは別に、引退後にフルタイム勤務の給料に匹敵する金額の年金を受け取る資格も失ってしまった。

フルタイムの職に復帰できないのではないかという不安もある。賃金の安い若手でもできる仕事に、50歳近い女性をわざわざ雇う職場があるだろうかと、コールグエデスは言う。

多くの女性にとって、経済的な打撃が本格的に表れるのは引退後かもしれない。もともと女性は男性に比べて生涯賃金が少ないので、たいてい男性よりも老後の蓄えが乏しい。

女性は平均寿命が男性より5年長く、より多くの老後資金が必要とされるにもかかわらず、である。しかも、公的年金の受給額も男性が月額平均1466ドルなのに対し、女性は1154ドルにとどまっている。

新型コロナのパンデミックは、こうした問題をいっそう悪化させる可能性が高い。保険・金融サービス大手のネーションワイド・ファイナンシャルが1月に行った調査によれば、女性の回答者の4人に3人近くは、パンデミックにより老後の蓄えに悪影響が及んだと回答している。

老後の生活設計を考える余裕がない

「30年後に女性の老後資金危機が起きたとき、始まりは新型コロナだったことになる」と、NWLCのメリッサ・ボテーク副所長は言う。

しかし、いま多くの女性は、老後の生活設計について考える余裕がない。どうにか当座を生き抜くだけで精いっぱいなのだ。

ドミニク・バーゴ(30)は、ニュージャージー州パターソンで学校の警備員として週給340ドルで働いていたが、昨年の休校措置で仕事を失った。その後、2月に職場復帰を打診されたが、応じることができなかった。

夫が仕事に出掛けている間、自宅で1歳の子供の世話をし、義理の子供たちのオンライン学習を手伝わなくてはならないからだ。

コロナ以前の賃金を基に計算すると、バーゴが2年間の離職期間に失う賃金は8万1269ドルに上る。以前、別の仕事をしていたときに老後資金をいくらか蓄えていたが、家賃の支払いに充てるためにその資金を引き出さざるを得なくなった。

「また老後のために蓄え始めたいけれど、今は借金を返済するだけでやっとだ」と、バーゴは打ち明ける。

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