ゾンビ撃ちまくるゲームにハマって大丈夫? あつ森と共通する「ある体験」とは
「あつ森」もシューティングゲームも、アレが増す
ビデオゲームをする大多数の人がゲーム障害になるかもしれないから、自治体が規制すべきだという意見も聞かれる。オックスフォード・インターネット・インスティテュートは、その意見も支持しない。
昨秋、同インスティテュートは、ビデオゲーム開発元の協力を得て、コミュニケーションゲームの「あつまれ どうぶつの森」とシューティングゲームの「プラントvs.ゾンビ ネイバービルの戦い」の大人のプレイヤーがゲームをしている時間(個人を特定できる情報は含まれない)を遠隔測定により集めた。「あつ森」は約2700人、「プラントvs.ゾンビ」は約500人がデータを提供した。これに加え、プレイヤーにゲームの遊び方に関して自己評価してもらった(論文「Video game play is positively correlated with well-being」)。
その結果、両グループとも、ゲームによってある程度メンタルヘルスが向上していると感じていた。従って、同インスティテュートは、ゲーム障害の予防策として緊急にビデオゲームを規制する必要はないと述べている。
EUでは、週平均8.6時間遊ぶ
ビデオゲームは子どもだけでなく、大人にとっても楽しいものだ。ビデオゲーム業界団体の欧州内ネットワークISFEのレポートによると、EUでは、ビデオゲームをしている人は6歳から64歳までと幅広く、平均年齢は31歳だ。年齢層をみると15~24歳が24%、45~64歳が22%、25~34歳が20%、35~44歳が16%などとなっている。ゲームに費やす時間は、1週間に平均8.6時間だった。
ISFEの次回のレポートでは2020年の調査が報告される。昨春、アメリカでビデオゲーム利用が75%増加し、イタリアでも主としてゲームをするためのインターネットの使用量が75%増加したように(デンマークのコペンハーゲン大学の研究所SODAS)、昨年、コロナ禍の影響で、世界各地でビデオゲームのプレイ時間が急増したのは間違いないとみられる。レポートでも、ゲームに費やした時間やゲームの売り上げは大幅に増えるだろう。
調査結果のゲーム依存者数は多過ぎ?
日本の様子はどうだろう。先の久里浜医療センターが調査に加わった厚生労働省・研究班の発表では、ゲームのみでなく、動画などへの依存も含めたネット依存が疑われる人は成人で推定約421万人(2013年)、中高生で約93万人(2017年)だ。日本の主要メディアも、この「約93万人の中高生がネット依存らしい」ということを報じた。
約93万人は、2017年の中学校、高校(通信教育課程含)、中高一貫校、高等専門学校の生徒数の計約685万(文部科学統計要覧より)の13.5%にあたる。決して少なくないが、「ネット依存」「ネット障害」が強調され過ぎると、ビデオゲームも悪い影響ばかりだという印象を与えるかもしれない。
なお、国際カジノ研究所長の木曽崇氏は「中高生で約93万人」に疑問を呈している。氏いわく、この調査の精度は低く、この数字には本当は依存ではない人が大勢含まれているのではないかと首をかしげている。
これほど世界中に広まったビデオゲームが衰退することは、もはやないだろう。日常生活に支障が出るほどのめりこんでしまうのは問題だが、子どもも大人もビデオゲームとの上手な付き合い方を見つけて楽しんでいきたいものだ。
[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com