最新記事

メラニア・トランプ

24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失ったもの

MELANIA’S AMERICAN DREAM

2020年07月10日(金)17時00分
ローラ・ミラー

首都への転居を遅らせた訳

複数の情報源によれば、選挙集会や演説の後、トランプがまず電話する相手はメラニアで、妻の意見を高く評価している。だがそこから浮かび上がるのは、夫妻の関係が主に電話での会話によって成り立っているという事実だ。トランプはバロック調の装飾と何台ものテレビが彩る自分専用の空間でチーズバーガーをむさぼり、メラニアは白一色で統一した自身のスぺースでサラダをつまみ、夫妻の息子バロンや父母と時間を過ごす。

米市民権を得た移民が親族を呼び寄せる制度にトランプは反対し、18年8月初めのオハイオ州での集会でも「連鎖移民」を非難した。だがそれから1週間とたたないうちに、ほかならぬ彼の妻が制度を利用し、メラニアの両親は米市民権を取得した。両親とメラニアとその息子の4人はスロべニア語で会話し、バロンは母親と同じく、アメリカとスロべニアの2重国籍を保有している。

NW_MNB_04.jpg

トランプとの息子バロンと AP/AFLO

『彼女のディール』が明かす最大の秘話は、トランプの大統領就任後もメラニアがホワイトハウスになかなか引っ越してこなかった理由だ。ファーストレディーの役割におじけづいたのでも、バロンの転校のタイミングを考えてのことでもなく、実は婚前契約を再交渉していたのだ。

トランプ政権誕生当時、大統領選はメラニアにとって最悪の悪夢だとの噂が飛び交っていた。もはや離婚間近で、うまくいっている夫婦を演じてもらうためにメラニアを必死でなだめなければならなかった、と。

だが夫の大統領選出馬によって、彼女は極めて有利な立場を手にした。トランプはそれなりの家庭像をアピールする必要があり、それにはメラニアの協力が不可欠だったからだ。

トランプの前妻マーラ・メイプルズが離婚の際にどれほど安く見積もられたか、メラニアは目撃していた。トランプがこれ以上、子供を欲しがらなかったため、結婚当時の婚前契約ではメラニアは譲歩を迫られたかもしれない。ところが、有権者という存在によってメラニアは大きな力を手に入れた。婚前契約の再交渉に当たって、彼女は離婚時により多くの金額を受け取るだけでなく、バロンがトランプ一族の事業や資産の権利の一部を保証されるよう求めた。

トランプとの結婚という長いゲームでメラニアが手にしたもの──富、家族に囲まれた生活、わが子の確かな将来──は、アメリカ人が理想とするはずのものだ。多くの移民と同じく、彼女は自分なりのアメリカンドリームをかなえるためにすべきことをした。その「夢」はむしろ悪夢のように思えるが、これだけは確実に言える。そんなことを、彼女は「本当に気にしない」のだ。

© 2020, The Slate Group


20200714issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年7月14日号(7月7日発売)は「香港の挽歌」特集。もう誰も共産党を止められないのか――。国家安全法制で香港は終わり? 中国の次の狙いと民主化を待つ運命は。PLUS 民主化デモ、ある過激派の告白。

[2020年7月 7日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか
今、あなたにオススメ

RANKING

  • 1

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 2

    エリザベス女王が「誰にも言えなかった」...メーガン…

  • 3

    「高慢な態度に失望」...エリザベス女王とヘンリー王…

  • 4

    なぜメーガン妃の靴は「ぶかぶか」なのか?...理由は…

  • 5

    エリザベス女王が「リリベット」に悲しみ、人生で最…

  • 1

    アメリカでなぜか人気急上昇中のメーガン妃...「ネト…

  • 2

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 3

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 4

    「私は妊娠した」ヤリたいだけの男もたくさんいる「…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 3

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    【ヨルダン王室】世界がうっとり、ラジワ皇太子妃の…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:インドのヒント

特集:インドのヒント

2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり