24歳年上の富豪と結婚してメラニアが得たものと失ったもの
MELANIA’S AMERICAN DREAM
首都への転居を遅らせた訳
複数の情報源によれば、選挙集会や演説の後、トランプがまず電話する相手はメラニアで、妻の意見を高く評価している。だがそこから浮かび上がるのは、夫妻の関係が主に電話での会話によって成り立っているという事実だ。トランプはバロック調の装飾と何台ものテレビが彩る自分専用の空間でチーズバーガーをむさぼり、メラニアは白一色で統一した自身のスぺースでサラダをつまみ、夫妻の息子バロンや父母と時間を過ごす。
米市民権を得た移民が親族を呼び寄せる制度にトランプは反対し、18年8月初めのオハイオ州での集会でも「連鎖移民」を非難した。だがそれから1週間とたたないうちに、ほかならぬ彼の妻が制度を利用し、メラニアの両親は米市民権を取得した。両親とメラニアとその息子の4人はスロべニア語で会話し、バロンは母親と同じく、アメリカとスロべニアの2重国籍を保有している。
『彼女のディール』が明かす最大の秘話は、トランプの大統領就任後もメラニアがホワイトハウスになかなか引っ越してこなかった理由だ。ファーストレディーの役割におじけづいたのでも、バロンの転校のタイミングを考えてのことでもなく、実は婚前契約を再交渉していたのだ。
トランプ政権誕生当時、大統領選はメラニアにとって最悪の悪夢だとの噂が飛び交っていた。もはや離婚間近で、うまくいっている夫婦を演じてもらうためにメラニアを必死でなだめなければならなかった、と。
だが夫の大統領選出馬によって、彼女は極めて有利な立場を手にした。トランプはそれなりの家庭像をアピールする必要があり、それにはメラニアの協力が不可欠だったからだ。
トランプの前妻マーラ・メイプルズが離婚の際にどれほど安く見積もられたか、メラニアは目撃していた。トランプがこれ以上、子供を欲しがらなかったため、結婚当時の婚前契約ではメラニアは譲歩を迫られたかもしれない。ところが、有権者という存在によってメラニアは大きな力を手に入れた。婚前契約の再交渉に当たって、彼女は離婚時により多くの金額を受け取るだけでなく、バロンがトランプ一族の事業や資産の権利の一部を保証されるよう求めた。
トランプとの結婚という長いゲームでメラニアが手にしたもの──富、家族に囲まれた生活、わが子の確かな将来──は、アメリカ人が理想とするはずのものだ。多くの移民と同じく、彼女は自分なりのアメリカンドリームをかなえるためにすべきことをした。その「夢」はむしろ悪夢のように思えるが、これだけは確実に言える。そんなことを、彼女は「本当に気にしない」のだ。
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[2020年7月 7日号掲載]