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多くの人が本意ではない選択をしている──子どもを「決められない大人」にしないためには?

2020年06月09日(火)17時05分
船津徹

人生は選択の連続(写真はイメージ) SyhinStas-iStock

<人生の岐路で決断を迫られたとき、自分を信じて「選ぶ」か、周りに流されて「選ばされた」道を行くか、どちらが悔いのない人生を歩めるのかは明白なのに、多くは本意ではない選択をしてしまう。アメリカ人の子育てに学ぶ「自分のことは自分で決める」トレーニングのヒント>

優柔不断で何事も自分で決められない子どもがいます。成長の過程で改善することもありますが、放っておくと何歳になっても自分が何をしたいのか分からず、何となく進学して、何となく就職して、何となく生きていくという大人になってしまう危険性があるので注意が必要です。

歯磨きを選択と捉えるか、習慣と捉えるか

多くの親は、毎朝子どもを起こして、服を選んで、食事を用意して、持ち物をチェックして幼稚園や学校に送り出してあげることが当たり前と思っています。しかし親が子どもの身の回りのことをやり過ぎるのは、見方を変えると、子どもから「自分のことは自分で決める」機会を奪っているとも言えるのです。

幼い頃から「自分のことは自分で決める」訓練を積み重ねていないと、自分のことがよく分からないまま大人になってしまいます。子ども時代に自分で考え、自分で決めて、自分で行動する経験を積ませることは「自分らしく生きる」ために不可欠な人生のトレーニングです。

「選択」研究の第一人者、コロンビア大学のシーナ・アイエンガー博士は日本人とアメリカ人学生の「選択」を比較する調査を行いました。その結果、アメリカ人学生は「目覚まし時計を止める」「歯磨きをする」という日常のささないことを「選択」と捉えている一方で、日本人学生はそれらを当たり前のこと=「習慣」と捉えていることが分かりました。

アイエンガー博士によると、平均的なアメリカ人は1日に70の選択を意識的に行なっているそうです。1日に活動している時間を16時間と仮定すると、14分間に1つ、何かを意識的に「選択」していることになります。日本人が無意識に行なっている日常のささいなことも、アメリカ人は「意識的に選択」しているわけです。

日々の生活の中で、子どもが「自分で選んでいる」「自分で決めている」という意識を高めることで、自分の人生は自分でコントロールしているという主体性を持つことができます。そのためには、親がしてあげていることを少しずつ減らして、子どもが「自分のことは自分で決める」機会を増やすことが必要です。

あえて失敗させるのも人生の大切な勉強

子どもの自立を何よりも重視するアメリカ人は「自分のことは自分で決める」子育てを実践しています。「It's up to you.」「It's your choice.」=「自分で決めていいよ」と繰り返し伝え、子どもに決めさせることで「自分のことは自分で決める」トレーニングをしているのです。

もちろん知識や経験が少ない子どもに決めさせると失敗することが多々あります。似合わない色の服を選んでしまったり、自分の好みの味ではないお菓子を買ってしまうかもしれません。しかし失敗しないようにと親が先回りするのではなく、あえて子どもに決めさせて、失敗を経験させることも「選択」の質を高めていくための大切なトレーニングなのです。

人生の岐路において、右と左、どちらを選択するかによって、そこから先の人生は全く違ったものになります。親や周囲の意見に流されて右に行くか、自分の考えを信じて左に行くか、どちらが悔いのない人生を歩めるのかは明白です。

ところが、多くの人が本意ではない選択をしてしまうのです。その理由は失敗するのが怖いからです。子ども時代に自分で決めて、失敗する経験をしていないと、何を基準に選べばいいのか、失敗した時にどう対処すればいいのか、その方法が分からないのです。そして皆と一緒の道を歩けば安心だからと、自分で決めることをやめてしまうのです。

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