多くの人が本意ではない選択をしている──子どもを「決められない大人」にしないためには?
身の回りのことは子どもに決めさせてみる
いつもは親がやってあげていることを子どもに任せてみましょう。朝自分で起きる、自分で着替える、自分で服を片付ける、自分で朝食を選ぶ、自分で食器を片付ける、自分で歯を磨く、自分で靴を選ぶなどを子どもに任せるのです。
「もうあなたならできそうだから、明日からは自分で目覚ましをかけて起きてね」と手を放してみると、意外と簡単にできてしまうものです。「任せる」ことは、相手の力を信じていないとできません。子どもに「任せる」ことは「あなたを信じて見守っているよ」というメッセージを伝えることでもあるのです。
服、靴、カバン、文房具、本、おもちゃなど、子どもの身の回りの物はできるだけ子どもに選ばせましょう。一緒にデパートに買い物に行って(予算を決めて)子どもに自由に選ばせてみると、それまで気づかなかった子どもの個性が見えてきます。
家族で外食する時は、メニューの中から食べ物や飲み物を子どもに決めさせてみましょう。「1000円以内で好きな物を選んでいいよ」と予算を決めて自由に組み合わせを選ばせると良い思考訓練になります。
小学生以上の子どもは家庭の重要な選択に参加させましょう。例えば新しいテレビはどれを購入すべきか、子どもと一緒に考えるのです。メーカー、機能、デザイン、サイズ、値段、評判などをインターネットで探す方法を教えれば、子どもが家族皆にとってベストなテレビを見つけてきてくれるはずです。
夏休みの家族旅行のプランニングを子どもに任せるのも良い訓練です。子どもが自分で考えて、決めて、実行する経験を積めるように親がチャンスを与えると、子どもは主体性を持って自分の人生を選択できるようになっていきます。
子どもに合った環境を決めるのは親
身の回りのことは子どもに決めさせて構いませんが、幼稚園や習い事など、子どもの社会性や知識・技能の発達に関わることを選ばせるのはNGです。例えば習い事を決める時に「子どもの意見を尊重します」という親がいますが、知識も経験も乏しく、自分の能力を満足に理解していない子どもに「賢い選択」はできません。
私は小学生(ティーンエイジャー以前)までは、教育や習い事の決定権は親が持つべきだと考えています。子どもの性格や能力や興味にマッチする環境、子どもを伸ばしてくれる指導者を「親が」吟味して選ぶことが大切です。ただ親が一方的に決めなければいいのです。
実際には親が選択した方向に導いていても「子どもが自分で決めていると思わせる」のが子育て上手な親です。そんな親は子どもに「自分で決めていいよ」と選択肢を与えます。その習い事に通いたいのか、子どもに決めさせることによって、主体性を持って行動しているという気持ちが生まれるからです。
親であれば我が子がどんな環境を好み、どんな習い事にマッチするのか分かるはずです。子どもの能力や好みに合いそうな習い事を探してきた上で、体験レッスンに参加させるのです。すると子どもはすぐに環境に馴染めますから「ここに行きたい!」と自分の意思で言うわけです。
子育てで一番大切なのは、子どものありのままを直視することです。そして子どもの個性、関心、興味、身体的特徴などから良い部分を見つけて、その部分を伸ばしてくれそうな環境を与えれば、後は子どもが勝手に成長していってくれるのです。
自分で考え、自分で決めて、自分で行動する
子どもが自分で考え、自分で決めて、自分で行動していく前提となるのが「親が見守ってくれている」という安心感です。失敗しても親が受け入れてくれる。うまくいかなくても何とかなる。困った時は親が必ず助けてくれる。子どもが親のサポートを確信していれば、失敗を恐れることなく、自分の道を自分で選択していけるたくましい大人に育っていきます。
[執筆者]
船津徹
TLC for Kids代表。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。2001年ハワイにてグローバル人材育成を行なう学習塾TLC for Kidsを開設。2015年カリフォルニア校、2017年上海校開設。これまでに4500名以上のバイリンガル育成に携わる。著書に『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)『世界で活躍する子の英語力の育て方』(大和書房)がある。
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