事故、病気、離婚......元ホームレス女性が社会の影を案内する「町ツアー」
高校生たちも社会見学としてツアー参加
貧困状態にある人たちの実態を市民に知ってほしいというガイドたちの真摯な思い、そして、自分の過去を公表する勇気に、町ツアーに参加する人たちが後を絶たない。グループ枠には、一般企業からのほか、政治関係者、市の行政スタッフ、教会関係者、病院スタッフ、教師、高校生たち(学校の授業の一環として)などが参加している。
筆者はほかのツアーにも参加した。どのツアーでも、終了時、参加者たちがガイドを心から称える様子は印象的だった。
「つらい経験を開示すること、そして複数の人に向かって話すことは誰でもできるわけではないので、ガイドになれる人は限られますね。でも、社会の影にいる孤立しがちな弱者とそうでない人たちが交流できるよう、ガイドを増やしていけたらと思っています」(ベルヒトルトさん)
[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」理事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com
2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。