最新記事

アメリカ社会

NYでノンアルコールバーが生まれる理由

2019年09月30日(月)18時50分
安部かすみ

ニューヨーク初のノンアルコール・バー「Getaway」 (c) Kasumi Abe

<ニューヨーク初のノンアルコール・バーがオープン。アルコールをめぐって、その背景にある事情とは......>

NY初ノンアルコールバーが人気

ニューヨーク・ブルックリンで、Getaway(ゲッタウェイ)という、ニューヨーク初のノンアルコール・バーがオープンし注目を集めている。

アルコール類を置いていないバーとは言え、ビールくらいは置いているだろうにと思いきや、アルコール飲料「ゼロ」という徹底ぶり。バーなのになぜアルコールを置いていないのか? その理由を共同オーナーのサム・トニスさんに聞いた。

ノンアルコール・バー(英語圏ではソーバー・バーとも呼ばれる)は、カリフォルニア州やテキサス州、国外ではロンドンなどにすでにあるという。またニューヨーク市内では、月に1度のイベントとしてスペースの一部をノンアルコール形態にする店もあるそうだ。しかし常設のフルタイム・ノンアルコール・バーは、Getawayが市内初だ。そこで、「誰もまだやっていない店をオープンしたかった」と、サムさん。アルコールを置かないもう一つの理由として、サムさんの兄の経験がきっかけになった。

「以前兄がドラッグ中毒の問題を抱え、AAプログラム(アルコール依存者のためのプログラム)に参加しました。このプログラムに参加するとドラッグだけでなく、すべての悪しき習慣を断つことがゴールになります。兄は成功し、4年前にお酒もスッキリやめることができました。そんな兄を見ていて思ったのは、断酒した人や下戸の人も気の置けない友人らと出かけて、夜を楽しみたいのだということでした」。しかしそのような場には大抵酔っ払いがいたりと、決して健康的と呼べるような雰囲気ではない。これがGetawayを作るもう一つのきっかけになったという。

Getawayに集うのは下戸や断酒成功者だけではない。妊娠中や授乳中の女性、マラソンをする人、ダイエット中の人、宗教的に飲めない人、アルコールなしでデートを楽しみたい人、ただ禁酒を試したい好奇心の強い人なども、夜な夜なGetawayのドアを開く。

アルコール依存症はれっきとした病気

Getaway人気の背景には、アメリカで飲まない(もしくは節酒中の)若者が増えていることがある。親世代を反面教師として自分は酒に溺れたくないという考えなのだ。

アメリカでは、アルコール依存症や中毒者に対する世間の目は、ドラッグ中毒者同様に厳しい。かつては、断酒したことや禁酒中であることを公言するのは勇気がいることだった。なぜなら「自分はアルコール問題を抱えていた」と、恥ずべき生活習慣を告白することになるからだ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

原油先物小動き、レバノン停戦合意の履行が焦点

ワールド

中国工業部門利益、10月は前年比10%減 需要低迷

ワールド

トランプ氏、機密文書持ち出し巡る裁判も終結 控訴取

ワールド

米通商代表にグリア氏指名、トランプ氏発表 元UST
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…

  • 2

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 3

    超一流を育てるユダヤ人の家庭教育で受け継がれてき…

  • 4

    「母になっても自分は自分だった」...コメディエンヌ…

  • 5

    メーガン妃とヘンリー王子の「単独行動」が波紋を呼ぶ

  • 1

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

  • 2

    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…

  • 3

    メーガン妃とヘンリー王子の「単独行動」が波紋を呼ぶ

  • 4

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 5

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 1

    「家族は見た目も、心も冷たい」と語る、ヘンリー王…

  • 2

    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…

  • 3

    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…

  • 4

    キャサリン妃が「大胆な質問」に爆笑する姿が話題に.…

  • 5

    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:老けない食べ方の科学

特集:老けない食べ方の科学

2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」