最新記事

音楽

ゆるキャラで野心家。エド・シーランの超豪華な最新作がイマイチな理由

2019年08月07日(水)17時15分
カール・ウィルソン

Fabrizio Bensch-REUTERS

<世界一売れているポップスターのコラボ最新作を素直に絶賛できないのは......>

英映画『イエスタデイ』は、うだつの上がらないミュージシャンが、ひょんなことから「ビートルズが存在しなかった世界」に迷い込む物語。彼がビートルズの曲を演奏すると、誰もがその名曲ぶりに感心し、たちまち世界的な大スターへの道が開け始める(日本公開は10月)。

そんな主人公に、巨大なコンサート会場で演奏するチャンスを与えるのが、カメオ出演しているエド・シーランだ。

「誰それ?」と思う人が(まだ)いるかもしれないので説明しておくと、シーランはいい意味でも悪い意味でも「ゆるい」を絵に描いたようなポップスターだ。彼の曲は現代的で美しいメロディーラインと、ピーク時のエルトン・ジョンを思わせる軽いリズム、そして時々笑えるくらい滑稽な歌詞が特徴だ(とはいえ、その歌詞が繊細だとして涙するティーンも多い)。

ルックスは赤毛のテディベアといったところ(実は上半身タトゥーだらけだが)。友達でいうと、仲間グループで4番目か5番目くらいに好感を持てるタイプだ。ラップが得意だと言って披露してくれるけれど、みんなが微妙な顔をしたら、後でさりげなくサイダーをおごってくれるような温厚な人物だ。

NW_EDO_0_NWW190807top.jpg

世界ツアーにアルバム制作、さらに映画『イエスタデイ』にも出演しているシーラン ©UNIVERSAL PICTURES

だからシーランは、かなり人気がある。いや、かなりどころか、とてつもなく人気がある。前作 『 ÷ (ディバイド)』は、ムに輝き、スポティファイやアップルミュージックなどの定額音楽配信サービスで最も聴かれたアルバムの1枚になった。

また、そのコンサートツアーは、史上最大の収益を上げたツアーの1つに数えられる。ただし数万人収容スタジアムでも、ステージに立つのはシーランだけ。アコースティックギターと自分の声とループペダルでハーモニーを作るから、バックバンドもいない。莫大な興行収入は、間違いなく経費がかかっていないせいもあるだろう。

さらにシーランの公演数は、ライバルたちよりも格段に多い。ゆるい見掛けにもかかわらず、シーランは仕事中毒なのだ。曲 のアイデアは、ほぼ無尽蔵に浮かんでくるらしく、ジャスティン・ビーバーからBTS(防弾少年団)まで、幅広いアーティストに曲を提供してきた。

交友関係の広さを証明

この7月にはついに、さまざまなアーティストとの共作曲だけを集めたアルバム『No6 コラボレーションズ・プロジェクト』がリリースされた。コラボレーション相手は、ポップスからラップ、カントリーまで幅広いジャンルの実力派新人から大物スターまで多種多様だ。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

グリーンランドに「フリーダムシティ」構想、米ハイテ

ワールド

焦点:「化粧品と性玩具」の小包が連続爆発、欧州襲う

ワールド

米とウクライナ、鉱物資源アクセス巡り協議 打開困難

ビジネス

米国株式市場=反発、ダウ619ドル高 波乱続くとの
あわせて読みたい

RANKING

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…

  • 3

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 4

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 5

    「結婚に反対」だった?...カミラ夫人とエリザベス女…

  • 1

    残忍非道な児童虐待──「すべてを奪われた子供」ルイ1…

  • 2

    人肉食の被害者になる寸前に脱出した少年、14年ぶり…

  • 3

    「SNSで話題の足裏パッドで毒素は除去されない」と専…

  • 4

    「なぜ隠さなければならないのか?」...リリー=ロー…

  • 5

    「ポリコレ」ディズニーに猛反発...保守派が制作する…

MAGAZINE

LATEST ISSUE

特集:トランプ関税大戦争

特集:トランプ関税大戦争

2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか