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ヘルス冬の健康を保つ理にかなっている? みかんの力を薬剤師に聞く
柑橘類のなかでも冬にぴったり Yue_-iStock
<寒い季節に食べるのが楽しみなみかん。実は温州みかんには、冬を健康に乗りきるための優れたはたらきがたくさんつまっている。薬剤師が解説する>
スーパーマーケットや八百屋の店先で見かける温州みかん。あのつやつやした色を見るとしみじみ冬を実感する方が多いかもしれない。この冬の風物詩ともいえる温州みかんは、実は冬を健康に乗りきるために理にかなった食べ物である。西洋医学的な面と東洋医学的な面から見てみよう。
同じ柑橘類でも温州みかんが冬にぴったりな理由
みかんやオレンジ、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘類は一年中手に入れることができるが、冬に食べるなら温州みかんがすすめられる。その理由を漢方薬局「東西薬局」代表薬剤師、医学博士の猪越英明博士が教えてくれた。
「東洋医学では食べ物に体を温めたり冷やしたりする性質『五性』が備わっているとされています。『熱性』、『温性』、『平性』、『涼性』、『寒性』のうち温州みかんは体を温める『温性』の性質を有しています」(猪越博士)
よく目にする柑橘類を体を温める性質のものから冷ます性質のものへと順番に並べると「温める性質:温州みかん(温性)>レモン(平性)>オレンジ(涼性)>グレープフルーツ(寒性):冷ます性質」となる。
柑橘類でも秋から冬にかけての寒い時季に摂るなら温州みかんがぴったりなのは、体を温める「温性」の性質を持っているからだ。
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「温州みかんの実にはビタミンCによる美肌効果、ふさについている白い筋に含まれるヘスペリジンによるビタミンCを安定させる作用、ふさの袋の部分に含まれるペクチンによる整腸作用などが期待されます」(猪越博士)
ふさの白い筋はきれいにとってから召し上がるという方がいるかもしれないが、ビタミンCの摂取を考えると一緒に食べるのが良いだろう。
このように西洋医学的な面においても温州みかんはビタミンCによるカゼ予防、ペクチンによる疲れた胃腸の調子を整える整腸作用など、冬を元気に乗りきるために役立つ食べ物だと言えるだろう。
実だけなく皮にも健康に役立つはたらきがある
一方、東洋医学的な面で温州みかんが力を発揮するのは皮の部分である。実を食べたら、皮も捨てずにとっておいて欲しい。
「温州みかんの皮を1年以上乾燥させたものが漢方薬の『陳皮』です。気を巡らせるはたらきがあって、呼吸器系と胃腸系に作用します。ご家庭では適当な大きさにちぎってざるなどに広げ、7~10日風通しの良い日陰で乾燥させたらお茶などにして活用すると良いでしょう」(猪越博士)
食べ終わった温州みかんの皮を使ったお茶の作り方を教えてもらった。
よく洗い、乾燥させた温州みかんの皮をひとつかみ(約10グラム)とり、500ミリットルの水に入れて火にかける。沸騰したら弱火にして40分くらい、分量が250ミリリットルくらいになるまで煎じる。このままだと味がないので、黒糖やはちみつなどを好みで加えよう。
黒糖には温め効果があり、体内に溜まった余分な水分を取り除くはたらきがある。はちみつは肺にはたらき、のどを潤すのでのどの乾燥を感じるときに加えると良い。冬の養生に大いに活躍してくれるはずだ。
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[執筆者]
高垣育
薬剤師ライター。2001年薬剤師免許を取得。調剤薬局、医療専門広告代理店等の勤務を経て2012年にフリーランスライターとして独立。2017年国際中医専門員の認定を受ける。毎週100人ほどの患者さんと対話する薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書「犬の介護に役立つ本」(山と渓谷社)の出版を契機に「人」だけではなく「動物」の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。