フランス人の自信の秘密は「性教育」にあった!? 実際に授業へ潜入してみた
家族計画センターで配布されている、思春期の男女に向けた「初体験」ガイドや性に関する冊子(Photo: Ayana Nishikawa)
次にクリスティーヌは、「なぜ性行為をするのか?」という質問を投げかける。生徒たちからは「快感のため」、「子どもを作るため」、「カップルの関係を維持するために必要不可欠な行為だから」とめいめいの答えが返ってくる。1人の生徒が「スポーツのため」と冗談半分に答えると、意外にもクリスティーヌは「良い答えよ」と褒めた。
「思いっきりスポーツをして汗をかいたあとは、幸せな気持ちになるよね? 愛する人との性行為も、その面では同じ感情をくれるのよ」
そんな幸せを感じるためには、お互いの「同意」がなくてはいけないと同氏は続ける。「カップル間のセックスは強制ではないの。それは、ダンスのようなもの。ある時一方がしたいと思っても、もう一方がしたくないときもある」
「大切なのは、自分の意思をはっきりと伝えること、そして相手の想いを理解しようとする心。女子が『Yes(はい)』か『No(いいえ)』をはっきりと言わないと、男子は『Yes』と捉えてしまうのよ」
生徒たちは納得したかのように、静かにクリスティーヌの話に耳を傾ける。
【参考記事】インドの性犯罪者が野放しになる訳
「マスターベーションは悪いこと?」
授業も中盤に差し掛かった。生徒たちもすっかり心を開き、踏み込んだ質問や議論がクラス中に飛び交う。まるで女子会のような雰囲気だ。
「マスターベーションって、悪いこと?」
「ポルノ女優のように、陰毛は脱毛するべき?」
クリスティーヌも「敬意」と「愛」をこめて、真っすぐ生徒の目を見つめて丁寧に答える。まず、「陰毛の処理」についてだ。ある生徒が言う。「ポルノでは、たいてい女性が陰毛をキレイに脱毛しているわ。男子はポルノで見たことと実際のでき事が異なると、焦ってしまうのよ」。すると、他の生徒が「陰毛の脱毛は、相手への敬意の象徴よ。処理をしないと失礼だわ」と意見を述べる。
クリスティーヌは優しく答える。「脱毛をするのが当たり前ではないのよ。嫌ならばしなくてもいい。大事なのは、自分がしたいからするということ。ポルノで見た女性をマネする必要はないわ」
生徒の質問がオーラルセックスにまで進むと、クリスティーヌは「それは、大好きな人と一緒に、自分自身・相手の身体について発見をしていく行為。ポルノのように"絶対的"な工程ではないわ」と優しく教える。
では、マスターベーションはどうか。生徒たちからは、「ヤダ―!」と恥ずかしそうな反応が見られたが、クリスティーヌは真剣に話を続ける。
「マスターベーションは、身体の一部を触ること。みんな、自分の爪、耳を触るでしょう? 自分に快感を与えることに、『変』だなんて思わなくてもいい。癖になる必要はないけど、決して悪いことではないのよ」。
クリスチャンによると、性教育には「実践的な性行為」と、「セクシャリテ」という角度があるという。前者は、前戯やオーラルセックスなど性行為における実用的な内容。セクシャリテは、自分自身、他者との関係の築き方を学び、自信や人間性を磨いていくことだという。