最新記事

新刊

ヒラリーの見えない本音

2014年8月4日(月)12時09分
ジョン・ディッカーソン

オバマとの「初デート」

 ジョージ・W・ブッシュ前大統領の忠実な側近だったコンドリーザ・ライス元国務長官さえ、回顧録では対立についてもっと正直に語っていた。例えば国家安全保障問題担当大統領補佐官として、イラクの戦後政策に集中して取り組むべきだと主張したときのこと。会議の冒頭でブッシュが「コンディが話したいと言ってたことだが......」と告げた途端、「将校たちの反応から、軍はもうこの問題を深刻に捉えていないことが分かった」と振り返っている。

 クリントンの回想録にはそんな率直さがない。無人航空機による爆撃に関してレオン・パネッタ国防長官と怒鳴り合ったと書いているが、どんな経緯でそうなったかは説明していない。

 コンゴ(旧ザイール)を訪問中、学生の質問が間違って通訳され、夫の意見を聞かれたと勘違いして怒ったエピソードは登場する。「私が国務長官です。だから私の意見を言います」。質問した若者は、オバマの意見について尋ねていたのだが。

 回顧録はどこまでも落ち着き、自信に満ちた調子が続く。クリントンが、何かのきっかけで切れるところなど想像するのも難しい。ここで語られるのは08年の大統領選予備選の後から。彼女が支持者に申し訳ないと感じる一方で、オバマとの関係を修復したいと切望していた頃だ。

 オバマとの関係は、試合後に挨拶するフットボールのコーチ同士のように友好的だったとヒラリーは書いている。オバマ勝利に終わった予備選後に会った2人は、初めてデートするティーンエージャーみたいにぎこちなかったという。

自分はいつも正しかった

 当初は自分の取り巻きと、大統領であるオバマの取り巻きの間に緊張があったことを認めているが、国務省と国家安全保障会議との緊張関係についてはほのめかすだけ。オバマの側近は外交上の決断をする際も国内政治への影響を考え過ぎる、と書いているものの、それほど辛辣な物言いではない。

 シリアの反政府勢力に対して武器援助を行うか、エジプトのホスニ・ムバラク大統領に圧力をかけるかなど、重要な問題でオバマと対立したこともある。それでも彼女は恨んでいない。オバマが別の道を選んだのは、あらゆる複雑な事情を考慮に入れた合理的な決断だとしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シンガポール、10月コアインフレ率は前年比2.1%

ビジネス

村田製、営業利益率18%以上・ROIC12%以上目

ビジネス

中国スタートアップ、IPO凍結で投資家の償還請求に

ビジネス

米国債価格が上昇、財務長官にベッセント氏指名で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    「典型的なママ脳だね」 ズボンを穿き忘れたまま外出…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中