最新記事

日米関係

駐日大使キャロラインとケネディ家の「遺産」

次期大使への起用が報じられたケネディは父の築いた強固な日米同盟を発展させる

2013年11月14日(木)13時21分
ジェニファー・リンド(米ダートマス大学准教授)

政治一家に生まれて 華やかなケネディの駐日大使就任は日本でも歓迎されるだろう Brian Snyder-Reuters

 この人事には、「ケネディ家の遺産」が一役買ったのかもしれない。故ジョン・F・ケネディ大統領の長女、キャロライン・ケネディが次期駐日米大使に任命される見込みだと、先週米メディアが一斉に報じた。

 彼女の起用は、長年ケネディ家が日米関係のために築き上げてきた功績があったからこそだろう。60年代、父ケネディと叔父ロバート・F・ケネディは日米同盟の変革のために奮闘。政略結婚のようだった両国関係を、真の同盟関係へと発展させた。

 第二次大戦後の日米の同盟は政治・軍事領域にとどまり、両国関係は緊張をはらんでいた。50年代にはアメリカの軍や外交関係者は日本を信用ならない格下の同盟相手と見なしていた。

 日本にとっても、アメリカは、疑わしい同盟国だった。中国から距離を置くよう要求し、ソ連との核戦争に日本を引きずり込みかねなかった。不安が頂点に達したのは60年の日米安保条約改定。冷戦の危機感が日本人を脅かし、反米感情は高まった。

 東洋史研究者のエドウィン・ライシャワー(後の駐日大使)は、こうした危うい日米関係を懸念し、より広範囲で強固な関係を築くべきだと提唱した。これに目を付けたのがケネディ大統領だった。

 当時ケネディは、64年の大統領選での再選を見据え、外交的な成果を狙っていた。そこで、現職大統領として初となる訪日を計画。それに先立ち、弟で司法長官のロバートと、その妻エセルの訪日を62年に実現させた。

 ロバートの訪日は、日米関係が大きく進展するきっかけとなった。ロバート夫妻は形式ばった会見を避け、一般の日本人と積極的に交流や対話を重ね、スターの力を見せつけるとともに親しみやすさで人々を魅了した。

 ロバートは、労働者や左翼学生団体など、最も手ごわい反対派にすら好印象を与えた。特に、学生の怒号が飛び交うなか行われた早稲田大学での講演では、反対派にも堂々と議論を呼び掛け、強い印象を残した。

 ケネディ大統領は63年に凶弾に倒れ、自身の訪日はついにかなわなかった。だがロバートの訪日後、日米は協力してさまざまな団体を設立し、より深く、広範囲な交流を展開して国民の支持を得るようになっていった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中