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戦争司令官不倫CIA長官の真のスキャンダル
それでも英雄視されるペトレアスだがアフガニスタンの実績こそ責められるべき
戦争にも失敗 ペトレアスの本当の失敗は不倫よりもアフガニスタンか Reuters
伝記を執筆したポーラ・ブロードウェルとの不倫スキャンダル報道が日に日に過熱するペトレアス前CIA長官。だがメディアの論調を見れば、彼は私生活では過ちを犯したものの、イラクやアフガニスタンの駐留米軍司令官として活躍した英雄であることは間違いない、といったものが大半だ。
先週の会見でオバマ米大統領は、ペトレアスのスキャンダルが「彼のたぐいまれなる経歴」の中の「ほんの1つの過ちだった、ということに落ち着く」よう願っている、と彼を擁護した。
だが「たぐいまれなる経歴」という言葉は偽りだと、元米軍中佐でアフガニスタン内務省の上級顧問を務めたジョン・クック退役兵は言う。情報将校として20年務め、数々の勲章を受章したクックは、9月に出版した著書『アフガニスタン──完全な失敗』の中で、衝撃的な秘密を暴露している。アフガニスタン戦争の主要な目的はすべて失敗に終わり、その責任はペトレアスにあるというのだ。
「不倫を理由に辞任するべきではない。アフガニスタンでの大失態の責任を問われて辞めるべきだ」と、クックは言う。「それこそが真のスキャンダルだ」
兵士より市民の命を優先
クックによれば、司令官に就任した2010年よりずっと前から彼の失敗は始まっていた。最大の過ちは、ペトレアスが06年に発表し、現在も採用されている「対反政府武装勢力戦略(COIN)」。米軍兵士よりもアフガニスタンの一般市民の生命を重視しているせいで、数多くの米兵の命が無駄に失われた。
結局のところ、米軍は戦闘地域に入っても一般市民がいないことを確認するまでは応戦もできず、航空支援も要請できない状況だった。「タリバンはそれを熟知していた。だから彼らは人口の密集した地域で攻撃を仕掛けてきた」と、クックは言う。
ペトレアスはオバマに支えられているだけでなく、メディアにも擁護されている。ワシントン・ポスト紙の記者は「彼の空席を埋められる人材はいない」と語り、CNNのアナリストは「アイゼンハワー大統領以来で最も優れた司令官だと、歴史が判断を下す」としている。
だが「政治家の言うことを気に掛け過ぎて、社会的・人道的に正しい戦争にしようなどと考えるようになったら、それは司令官として迷走しているということだ」と、クックは言う。
アフガニスタンでの後任となったジョン・アレン司令官についてもクックは切り捨てる。アレンは、ペトレアスのスキャンダル発覚の発端となった女性ジル・ケリーと不適切な関係があったとして、現在FBI(米連邦捜査局)の調査を受けている。
「アレンとペトレアスはよく似ている。彼らは過去の司令官たちと違って、ワシントンの政界に立ち向かう度胸がなく、誠実さにも欠ける」とクックは言う。
クックが声を上げたのは「米軍を愛している」からだ。「勝ち目のない戦いで彼らが摩耗していくのは我慢がならない」
彼の見解が正しければ、ペトレアスは妻だけでなく、アメリカの信頼も裏切ったことになる。
[2012年11月28日号掲載]