最新記事

米大統領選

歴史を作るオバマ2期目のシナリオ

2012年11月7日(水)13時31分
アンドルー・サリバン(政治・メディアコラムニスト)

 障害になるのは共和党だ。もしも選挙に負けた共和党がさらに右傾化すれば、オバマがレーガンのような成果を挙げることは不可能になる。

 共和党議員は理解すべきだ。共和党の敗北は財政の問題で譲歩しなかったせいであること、移民法改革に反対すれば共和党は存続できなくなること、そして税制改革は両党にとって共通の目標であることを。だが今の議会共和党には

 中道派がほとんどいないから、妥協は難しいかもしれない。

 それでも、妥協の姿勢を見せたほうが選挙で有利だと理解し始めた共和党員もいる。上院選にインディアナ州から出馬したリチャード・マードックも、当選したら「誰とでも協力する用意がある」と語っている。

 ティーパーティー寄りとされる上院議員のジム・デミントでさえ、こう発言している。「税収を増やすというオバマの希望に応えなければ国防費が足りなくなる」。共和党にも、党利にこだわって問題を大きくするより、問題解決に貢献したいという考えはあるはずだ。

 11月の選挙で大敗すれば、共和党員にも国民としての自覚が戻るだろう。狂信的な人々の目を覚まさせるのは敗北だけだ。共和党穏健派はその敗北を足場とすることができる。

 オバマが再選されれば、共和党を中道寄りに引き戻せる。レーガンの成功が民主党を中道に導き、クリントン大統領の誕生につながったのと同じだ。

 今の共和党にも、いずれ中道派として大統領候補になれるような人材はいる。だが今回ロムニーが当選してしまったら、彼(彼女)のチャンスは遠ざかってしまうだろう。


「収穫の時期」はこれから

 筆者の話を、夢見がちなリベラル派の妄想と笑う人もいるかもしれない。80年に高校生だった私はレーガンのバッジを着けていたが、それは08年にオバマのTシャツを着たのと同じ理由からだ。政策は違っても、2人とも自分が直面するさまざまな課題を正しく認識していた。真の危機にあっても、ライバルより大きな理想を抱いていた。

 4年前に多くのオバマ支持者が抱いた希望は偽物ではなかった。私たちは奇跡を夢見てはいなかったが、その1年後にアメリカを経済的、倫理的にどん底に引きずり込んだ勢力に必死で抵抗していた。オバマはその勢力と現実的に粘り強く闘った。

 オバマは、失敗のない大統領になるとは約束していない。国民の努力が必要だと説いてもいる。4年前の就任演説でも「私たちが直面する難関は現実であり、深刻であり、たくさんある」と語っていた。

 そんななかでも、彼は1期目にイラクから予定どおり撤退し、第2次大恐慌を防ぎ、雇用を回復させ、自動車業界を救い、テロ容疑者への拷問をやめさせ、軍隊における同性愛者への差別をなくし、同性婚への支持を明言した。これでもまだオバマに失望したとか裏切られたとか言う人がいれば、おそらく彼らは本物の変化を真剣に望んでいたわけではないのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中