最新記事

銃規制

銃乱射で勢いづく銃支持派の狂った論理

2011年1月12日(水)16時51分
ウィリアム・サレタン

訓練された兵士でも誤射は起こる

 これは、一般に報道されているよりもずっと危険な話だ。ザムディオは拳銃の安全装置を外し、銃を持った犯人と思われる人物を見かけたら発砲するつもりだった。彼が銃を撃つかどうか判断するまで一瞬しかなかったのだ。彼は銃を持っていた男性を犯人だと確信して壁に押し付けたが、発砲は思い止まった。罪のない人を撃ち殺すまで、ほんの紙一重だったわけだ。

 銃を持って殺人の事件現場に駆けつける人には、誰にでも起こりうることだ。混乱と緊張の中で、間違った相手を撃ってしまう可能性だってある。あるいは、現場で自分の銃を取り出したために、自分が犯人と間違われる可能性もある。

 バーン! 一発で終わりだ。運が悪ければ、銃を持った罪のない人々の間で銃撃戦が起こり、バンバンバンバンバン!になるかもしれない。それは、訓練を積んだ兵士の間でも起こりうる事態だ。一般市民では、その危険はずっと大きくなる。

 正式な訓練を受けたことのないザムディオが、瞬時に正しい判断を下せたのは、本当に運が良かったとしか言いようがない。次の銃乱射事件のときにも同じようにいくとは限らない。

 今回の事件を受けて、アリゾナ州が議員やスタッフを対象に、銃器の正しい取り扱い方を指導する訓練を行うことを期待する。彼らが選挙区の会合の場に銃を携帯して出席するつもりだとしたら、その時にはこの訓練を思い出してほしい。だがさらに言うならば、そもそも彼らが銃を持ち歩かないことを望みたい。 

Slate.com特約

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

三菱電の今期、米関税で300億円コスト増 営業益は

ワールド

ECBは利下げ余地ある、トランプ氏の政策機能ぜず=

ワールド

中国が南シナ海の鉄線礁を「統制下に」と主張、フィリ

ビジネス

TDK、26年3月期営業益予想は0.4%増 リスク
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 7
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 8
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 10
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 7
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 8
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 9
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 10
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中