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米医療保険、もう1つのヤバイ話

2009年9月14日(月)18時35分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

企業の63%「社員に負担増求める」

 この10年間、賃金の水準が上昇していないのは、企業にとって医療保険などの負担が重くなっているからだと、エコノミストたちは指摘してきた。それはそのとおりだ。しかし、企業は医療保険のコストをすべてかぶっているわけではない。給料アップを抑えるという間接的な形だけでなく、自己負担割合の増額など、もっと直接的な形でもコストを社員に転嫁してきた。

 コンサルティング会社マーサー・コンサルティングの最近の報告書によると、企業は社員へのコスト転嫁を今後さらに推し進めるつもりらしい。2010年に「医療保険コストの負担増をさらに社員に求める予定だという企業は回答企業の63%に達する」と、マーサーの報告書では記している。

 医療保険料の社員負担増額を求める方針の企業は全体の40%。治療費の自己負担割合の引き上げを求めるという企業は39%に達した。手厚い医療保険プランの選択肢をなくして、もっとコストの少ないプランに切り替えるという企業も18%あった。

 要するに、雇用主を通じて医療保険に加入している人の多くは、今までと同じ内容の医療保険に対して保険料負担が増すか、病気になった際の自己負担額が増すかのどちらかなのだ。

 いま雇用主を通じて医療保険に加入している人が医療保険改革の動向に神経を尖らせ、既得権を失うのではないかと恐れるのは、無理もない。しかし、これまでと同じ負担で同じ内容のサービスを受けられると期待するのはあまりに非現実的だ。

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